50年前の「あさま山荘事件」や集団リンチ事件を起こした連合赤軍に加わり、悲劇的な死を遂げた大槻節子さんとの交流の思い出をつづった『裏切れない!「蛙」の声が今も聞こえる』(彩流社)が出版された。
著者は、大槻さんの友人で川崎地方自治研究センター研究員の片井博美さん(75)。約5年間の親交の中で垣間見えた大槻さんの苦悩や葛藤などを紹介。「政治的イデオロギーではなく、人間らしく生きるとは何かの問題」に触れたという。
大槻さんは1972年1月、群馬県迦葉山(かしょうざん)の山岳アジトで「総括」の名のもとリンチを受け、23歳で死亡した。
苦悩、葛藤描く
大学で同期の2人。著書は、読書会での出会い、社会科学や文学などを巡る議論やデモ参加の思い出を紹介。大槻さんはその後、革命左派、京浜安保共闘、その後合流した連合赤軍と、政治党派活動に入り込んだ一方、片井さんは距離を置いた。こうした中でも交流は続いた。「(大槻さんは)党派以外の眼を必要とし大切にすることで、自分の中にある党派によらない核をなくしたくない願望があったように思う」と回想する。
連合赤軍最高幹部の一人だった永田洋子死刑囚(故人)の著書にも言及。大槻さんがリンチ死に加担した記述について、「告白も懺悔も神か仏に向かってなされるもの以外はどこかに不純なものが混じっているのではないか」という故・瀬戸内寂聴さんの言葉を引用して疑問を呈した。
著書では、武蔵小杉駅前の喫茶店で、自身の逮捕を予感した大槻さんが書類袋を託した際の思い出や、愛誦した草野心平の『蛙』の詩なども紹介する。
「閉鎖空間の狂気」
片井さんは大学卒業後、民間企業を経て、川崎市役所に勤務。連合赤軍事件について「閉鎖空間の狂気がなせる業。ただ、狂気は人間だれしもが持っている。現代的な問題に引き寄せれば、パワハラやDV(家庭内暴力)、過労死もある種の閉鎖(密室)空間がなければなし得ないのでは」と指摘。著書を通じ、「私たちの青春時代の友人は夢や志を求めあった密度の濃い関係。そこで築かれた友情は分かち難く残っている。若い人にはそうした側面も知ってもらいたい」と語る。183ページ、全7章で構成。税込1760円。
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