旧日本軍の遺留品を返還しているアメリカのNPO法人が4月15日、宮前区内の戦争遺跡を視察に訪れた。2年前に、東部62部隊の兵士が出したはがきを返還しようと「みやまえ・東部62部隊を語り継ぐ会」(大泉雄彦代表)に連絡したことがきっかけ。ジャガードさんは「少しでも多くの遺留品を祖国に返還し、少しでも喜んでもらえたなら」と思いを語った。
米国に持ち帰られた日本軍の遺留品を収集し、祖国日本へ返還する活動を約50年続けているアメリカのNPO法人「キセキ遺留品返還プロジェクト」(ジャガード千津子代表)。区内を中心に、戦争遺跡を平和のために史跡として語り継ぐ活動をしている同会をウェブ上で発見し、2021年に「62部隊の兵隊が出したはがきを返還したい」と連絡した。同会で調べたが、差出人の部隊名までは判明しものの、宛先などその先はつかめなかった。同法人は「保管と活用を」と同会にはがきを寄贈した。
これらを契機に双方の交流が深まり、今回返還する遺留品を届けに来日。宮前に立ち寄り、折しも川崎大空襲のあった日に視察が行われた。ジャガードさんと国内プロジェクトメンバー、その友人、同会メンバーなど約15人が梶ヶ谷駅に集合。戦争供養地蔵(高津区)から国道246号線に出て、盛り土をして造られた長坂から、被服廠、高射砲陣地を設置する予定だった馬絹大塚、部隊本部だった宮崎中学校、青少年の家のお化け灯篭、馬房、装蹄小屋を視察し、大泉代表の解説に耳を傾けた。
「魂宿る」祖国へ
近年では、名前の入った遺留品などは、責任問題から受け取り拒否されることもあるという。それでもボランティアで返還を続けるジャガードさんは「大切にしていた物には魂が宿る。死ぬ直前まで身に付け大切にしていた遺品を祖国に、できれば遺族に届けたい。鎮魂と、遺族の安らぎにつながるはず」と活動の意義を語る。返還できない場合も、有効活用してくれる所へ寄贈している。
ジャガードさんは今後、横須賀や鹿児島・知覧、北海道など、約3週間かけて日本各地を回り、プロジェクトを進めていく予定。
教え子から情報も
大泉代表は、元宮崎中の教諭。生徒とともに地域の歴史を調べたのは30年ほど前だが、今も再会した教え子やその家族からの情報により、確証が取れることも少なくないという。「情報提供はありがたい。私たちは、戦後責任を果たしていかなくてはいけない」と話した。
宮前区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|