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アーティスト鈴木さん 珠洲に魅せられて 「第二の故郷」への思い語る

文化

公開:2024年5月10日

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被災する前の『ドリフターズ』(珠洲市)=木奥恵三さん撮影
被災する前の『ドリフターズ』(珠洲市)=木奥恵三さん撮影

 「あっけにとられていました」。美術作家・特殊照明家の鈴木泰人さん(麻生区在住)は今年2月下旬、床に散らばった大量の赤御膳などの民具を見つめていた。

 場所は石川県珠洲(すず)市にある「スズ・シアター・ミュージアム」。同市全域を会場とした現代アートの祭典「奥能登国際芸術祭」の2回目(2021年)開催に合わせてオープンした施設だ。

 その中には、鈴木さんと建築家、映像作家によって組織されたアーティストコレクティブ「OBI」が約3年の歳月をかけて、21年の芸術祭へ向け完成させた作品も展示されていた。能登半島地震が発生した1月1日は休館日だった。「作品が崩れて、ケガをされた方がいなかったことが不幸中の幸い」

「ありのままを」

 川崎市で育った鈴木さんは、つながりの深いアーティストの作品に使用される光の演出のため、17年に行われた第1回の同芸術祭に携わった。最初に訪れた珠洲市の印象は「海と山が近く、自然豊かな場所だった」と振り返る。

 「仕事で偶然関わった場所だが、風土や雰囲気を感じられた。作品のイメージを膨らませやすかった」と、第2回の同芸術祭への出展を決めた。赤御膳などの地元で使われてきた民具を並べて作ったのが現代アート作品『ドリフターズ』。珠洲市内の蔵や自宅などにあった民具は、一つの空間に流れ込む漂着者(ドリフターズ)。それらに手を加えずに並べることで”ありのままの珠洲”を体感できる。「民具の思い出話を楽しそうに語ってくれた珠洲の人たち。人が温かくて優しく、フレンドリー」と鈴木さん。民具を並べる作業は地元のボランティアが積極的に手伝ってくれ、交流も深まった。「お菓子やご飯などの差し入れも持ってきてくれて。展示には、孫を連れてきてくれた人も」。思い出し笑みがこぼれる。

 『ドリフターズ』は芸術祭終了後も常設展示されていたが、今年の元日に崩れ落ちてしまった。ミュージアムは休館を余儀なくされ、今も見ることはできないままだ。

記憶に残る音

 昨年行われた第3回には個人として、音の現代アート作品『音蔵庫』を出展した。日本海や森の音。そろばんや、椅子を引く音――。約1年をかけて珠洲市内の音を録音して歩いた。地元の人に教えてもらったスポットも巡った。忘れられないのは山の中で聞いた「ヒグラシの大合唱」だという。「こんなにセミの鳴き声って響き渡るんだ」。感動した記憶が今も残っている。

 「その人がそこに住んでいるから出る音。海も場所によって、音が違うんですよ」と鈴木さん。全国各地から芸術祭に訪れた人たちに、聞いてもらった珠洲の音。「音で記憶に収まった」

真の復興とは

 「第二の故郷」を能登半島地震が襲った。報道に触れ、次々と頭に浮かんできたのは、アートを通じて出会った珠洲の人たちの顔だった。

 常設展示の確認作業などもあり2月に珠洲を訪れた。「山肌が削られて、茶色になっていたり。景色が変わっていて驚いた」

 道路や水道などのインフラは早いスピードで復興が進んでいるという。だが元々、過疎化が進む地域。また、観光へのダメージも深刻だ。「表現活動を珠洲で珠洲の人たちとしたい。人がいないと、本来の姿には戻らない。多くの人に文化を感じてもらいたい」。アーティストとして、どう関われるか、何ができるかを模索している。

珠洲市の音を録音する鈴木さん(右)=本人提供
珠洲市の音を録音する鈴木さん(右)=本人提供
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