健康寿命の延伸や高齢者の生活の質向上を目指し、慶応義塾大学と川崎市が2年前から行っている「高齢者コホート学術研究」。85歳から89歳までの健康な市民を対象に、千人以上の協力で基礎調査がこのほど完了した。今後、数年にわたる追跡調査で「健康長寿の秘訣」の解明を試みる。
この調査は、慶大殿町キャンパス(川崎区)を含む市臨海部を拠点とした研究開発の一つ。同大が20年以上取り組んできた百寿者研究の成果を踏まえ、市内の高齢者の暮らし方や健康に関する研究を進めている。
基礎調査は2017年3月に開始。介護の必要がない市内の高齢者約1万人に依頼状を送り、そのうち1028人が協力した。生活習慣や地域参加に関するアンケート調査に加え、市立病院を会場とした健康調査を38回に分けて実施。身体計測や心電図、運動機能、骨密度検査など多岐にわたる情報を収集した。
基礎調査完了の報告として同大は先月20日、高津市民館でシンポジウムを開催。「4人に3人は骨粗しょう症あり」「半数の人が町内会・自治会活動に参加」「『新聞・本を毎日読む』という人が約9割」など、初期段階の速報値が公表された。会場には調査協力者ら約250人が出席。参加した高津区在住の佐々木郁代さん(88)は「調査が自分の健康診断にもなる。こういう機会があるのはうれしい」と話し、中原区在住の上野二郎さん(88)は「健康寿命は大事だなと感じる。調査結果を研究に生かしてもらえたら」と期待を寄せた。
今後は半年ごとの聞き取り調査に加え、医療保険等の社会保障データを用いた詳細な追跡調査を続ける。シンガポールでも同様の調査が進んでおり、国際比較も可能になる見通しだ。慶大医学部百寿総合研究センター専任講師の新井康通氏は「100万人規模の自治体でないとできない調査。要介護になる過程など、経過がどのような要因によって説明されるかで健康長寿の秘訣がわかってくる。次代に役立つ情報として、健康産業に生かしていきたい」と語った。
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