神奈川県が推進するメガソーラー設置の誘致先の一つにあがっている厚木市上古沢。同地域の遊休農地を活用して、民間の太陽光発電所を建設する別の計画が、先行して進んでいることが分かった。土地の所有者でもある東京工芸大学の白井靖男名誉教授(68)が行う国際的な実証プロジェクトで、小規模ながら地域で電力を創出する新しい取り組みとして注目を集めそうだ。
プロジェクトは、白井教授と東京のシステムインテグレーター、GC&C(株)(吉田愛一郎代表取締役)が中心となり、韓国の現代グループ(現代ジャパン)がソーラーパネルを、オーストラリアのクリーンエナジー(日本代理店(株)CSC)がパネルを設置する架台を提供。およそ200平方メートルの土地に108枚のパネルを設置し、一般家庭用太陽光発電の8軒〜10軒分に相当する総出力24・3キロワットの発電を計画する。
発電した電気は東京電力(株)に販売する一方で、照明や電気柵などの農業用エネルギーとしても活用する予定で準備を進めている。
予定地の地目は畑のため、パネル設置には農地転用が必要。先に閣議決定された農地にパネルを置く、農山漁村における再生可能エネルギー発電促進法案を実践しいち早く転用に結び付けるケースになるという。
白井教授は既に東京電力に発電所建設の申請を済ませており、県から転用の許可が下り次第、4月下旬から5月上旬にパネルを設置する予定。遅くても6月上旬の稼働を目指している。
「世界的に珍しい」
白井教授の専門分野は、光エネルギー変換と触媒化学。予定地が谷状の地形にあり、日照時間が少ないことから、パネルを設置する6台の架台を上下左右に動かすことができるコントロールシステムを採用する。
太陽に対して季節ごとに向きを変えて変換効率を上げる試みは「世界的に見ても珍しい」と話す。
設備は1キロワットあたり30万円台と高額だが、20年以上の耐用性があり、7年でコストが回収できる試算。「自然が相手なのでリスクはあるが、夢を持ってやるしかない。地域の役に立てるように規模を広げていきたい」と語った。
GC&Cの吉田代表は「成功すれば地域ごとに電力をまかなう道筋もできる。大規模発電に比べて効率も良く、国家のプロジェクトになる可能性もあるのでは」と期待を話した。
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