厚木市最大のイベント「あつぎ鮎まつり」が3年ぶりに復活する。8月6日(土)と7日(日)に開催される夏の風物詩を前に、キーマンに思いを聞いた。
▽闇を駆け上る一筋の光。空気を震わす轟音と共に、鮮やかに咲く大輪――。江戸の昔から人々の心を掴む花火は、鮎まつりのシンボルでもある。「3年ぶりに上げることができることは、やはり感慨深いですね」と話すのは、厚木市三田にある株式会社ファイアート神奈川の和田順代表取締役。地元最大のイベントでの打ち上げは、同社一番の「要となる仕事」だ。
▽開催決定は5月末だった。例年のように準備期間がたっぷりあるわけではない。しかも、演出によってはこれから新たに作製する花火もあるという。それでも「今年こそ花火が戻ってくるはず」と信じ、昨年から花火を作り続けてきた。
▽新型コロナが猛威を振るった2年前、全国各地で祭りの火が消え、花火の音も止んだ。先の見えない状況に「怖かった」と正直な思いを語る。そんな不安を払ったのは、地域の人々からの声だった。「子どもたちの思い出に」「みんなに元気をあげたい」。自治会、学校、奉仕団体などから、徐々に花火の依頼が増えていった。「本当に嬉しかった」と目を細める。
▽明治40年に創業した同社。かつてはリヤカーに花火を載せて運んだ時代もあった。「潜り橋のところへ、ロープで河川敷に下ろしてね」と話す和田吉二会長。過去の大花火大会は、今に比べて数は少なかったが、大玉だったという。圏央道の開通などによって、玉は小さく、数を多く変えていった。「社会がコロナの前に戻ることはないのかもしれません。それならば、今年の打ち上げは私たちにとって新たな時代の第一歩。原点に立ち返り、花火本来の楽しさを堂々と楽しんでいただく、そんな演出を練っています」。和田代表取締役の瞳には、既に川面を照らす大輪が見えている。
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