『物に描く絵展』を、根岸町のCafé&Barギャラリー55で開催中(16日まで)の 加藤 聖子さん 森崎在住
「逆らいの心」で表現
○…キャンバスは「紙」ではない。使わなくなった断裁機や琴、学校の先生が使う教壇分度器などの木製の「物」に描いた。アクリルで表現された女王、鳥、猫…。キャンバスそのものに立体感があり、じっと目を凝らすと、木目や装飾の金属片が作品全体に”味”を出している。「昔から紙に描くのが好きではないんですよ。逆に、木と金属が本能的に好きなんだと思います。描きづらいですけどね」。
○…幼い頃から習い事で絵を描いていたが、”のめりこむ”ほどではなかったという。市立横須賀高校時代も、美術部には入らなかった。「油絵の匂いが苦手で…。でも先生には可愛がってもらいました」と当時を懐かしむ。学生時代から平面よりも立体の作品に惹かれ、進学した多摩美術大の大学院では彫刻を専攻した。
○…今も昔もアート一本で食べていくのは難しく、仕事に活かすのも簡単ではない。だが、「全て縁だけで何とかここまで来ました」ときっぱりと話すのは、仕事も作品発表の場も、知り合いの紹介や好意で得てきたからだ。三浦の建築会社でキャド(コンピューター上の設計)を覚え、平作のデザイン会社で経験を積み、またギャラリーで個展を開いた。感謝の想いは尽きない。現在は独立し、ダイレクトメールやパンフレットなどのデザインを手掛ける。流行ものからシンプルなデザインまで、幅広く顧客に提案している。
○…前の会社で使っていた断裁機。刃が古くなり切れ味が悪くなった。「何かに生かせないか」と着想したのが今回の個展のコンセプトだ。目が向くのは、綺麗なものより傷ついているもの。新しいものより古いもの。「逆らいの心」と表現するアートへの想いは、あまのじゃくのようにも聞こえるが、芸術家らしく面白い。「次のキャンバスですか? 楽器に描いてみようかな。綺麗な高級ピアノやバイオリンを崩してみたいですね」。自由な発想は尽きることがない。
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