市人文・自然博物館で開催中の企画展示に作品協力する「横須賀木鳥会」の中心メンバー 鈴木 進さん 若宮台在住 77歳
木片に宿す野鳥の息吹
○…止まり木で餌を啄む姿や羽を広げて飛び立つ躍動感をリアルに再現する木彫りの鳥。バードカービングと呼ばれるその彫刻は鳥の生態や骨格を把握した上で、羽毛の柔らかな質感や艶やかな光沢感、目や嘴の大きさまで忠実に作られる。まるで生き写しだ。1体に費やす期間は約1カ月〜半年。会では30余名が制作に励んでおり、「じっくり時間をかけて仕上げた達成感を多くの人に味わってほしい」と講師を務めている。
○…定年後の趣味として知人から勧められ、バードカービングを始めた。第一印象は「聞き慣れない横文字…」。しかし、完成形を頭に思い描き、写真(平面)から木彫り(立体)にしていく作業は現役時代、自動車設計に携わっていた技術者の血を大いに騒わがせた。作業に没頭し、出来上がったのは一羽のスズメ。完成度を尋ねると「まあまあ」と苦笑いをこぼすが、苦心の末に生まれたスズメはたとえ不格好でも我が子のように愛おしい。
○…精巧さが求められる作品ゆえ、表現に不自然さはあってはならない。「例えば翼を広げたと時と閉じた時。羽の重なり方や筋肉の隆起する部分は全く違うんです」図鑑で補えない情報はフィールドへ積極的に出て観察する。中でもYRP内にある光の丘水辺公園は野鳥の宝庫。「清らかな渓流に生息しているイメージが強いカワセミだってやってきます」まさに自然が生きた教科書だ。
○…バードカービングが担う役割は単に工芸や娯楽的要素だけではない。昨今では動物保護の観点から剥製に代わって展示する博物館も増えているという。「剥製は見るだけだが、彫刻なら希少種の鳥も触れる。これなら視覚障がい者でも形や大きさなど触覚で学ぶことができます」と有用性を分析する。取材中、企画展示に訪れていた小学生が「カラスってこんなに大きいんだ」という歓声にも嬉しそうに目を細め、満足げな表情を浮かべていた。
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