今月1日に開所した市内初の医療型障害児者入所施設「ライフゆう」の施設長を務める 林 なをみさん 横須賀市出身 60歳
医療と福祉で生活豊かに
○…「重症心身障害の人たちの地域生活を支えたい」。重症児者の通所施設やショートステイ事業を展開する「みなと舎」が新しく作った入所施設の施設長に抜擢される。一昔前までは、養護学校を卒業した後は家で介護されるか自宅から遠い施設で過ごすかの二択しかなかった。「今はようやく地域の中で暮らしていける土壌が整いつつある」と笑顔を見せる。
○…「結婚しても続けられるよう手に職を」という母親の後押しもあり横浜市大医学部へ。子どもとの交流活動などを行う学生セツルメント(奉仕団体)を通し、障害児医療への関心を深めた。卒業後、川崎で小児科医として走り続けた30年。「うちの子、他の子と違うようだけど大丈夫だろうか」。我が子の異常に真っ先に気づく母親の最初の相談窓口として、真摯に耳を傾け続けた。
○…施設の立ち上げにあたり、福祉の世界との違いを痛感することもあった。医療現場では、一時的な病気や怪我を治療し、自宅に帰すのが基本的な流れ。しかし福祉の世界に終わりはなく、その人の人生に寄り添うことが求められる。加えて医療人として重症児の体調を考え制約をかけたくなる衝動と、「その子らしさを最大限引き出すために様々なことに挑戦させたい」という思いで板挟みになることがあるという。「医療人も福祉人の主張も、利用者を思ってのこと。だからこそ、現場では互いに意見をぶつけていきたい」
○…自身の子育てが一段落したのを機に、仕事をセーブし海外旅行に行くように。イギリス・トルコ・エジプト…旅先でも目が行くのはその国の障害者事情だ。先進国フランスでは、車イスの児童がクラスに溶け込み課外授業に参加しているのを目の当たりにした。「服装や髪の色がバラバラでもみんな気にしない。日本もこうあってほしい」。医療と福祉は車の両輪。重症児とその家族の希望を背に、いよいよ発進だ。
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