「折紙名人」として地元の自治会などを中心に15年間折紙を教え続けている 中西 順三さん 東浦賀在住 83歳
「恩返し」胸に折り続ける
○…見せてもらったのは、いかつい恐竜や立体のバラ、模造紙で折ったという巨大な富士山――。切り貼りせずに作ったとは思えない作品の数々に「折紙の世界は奥が深いんです」とにっこり。「『今どき折紙なんて』と言われるけど、逆に新鮮なのか、夢中になる子どもたちが多いですよ」
○…兵庫で生まれ育ち、20代半ばで鉄道関係の会社で海外の技術を日本に広める仕事を任された。ドイツで行われた会合で、コミュニケーションの助けになればと鞄に潜ませたのが、手先の器用だった父親が幼少期に教えてくれた折紙だった。「これが大当たりでね」。15cm角の紙をドイツ人の目の前で折っていくと「ブンダバー!(素晴らしい)」と感激され、堅苦しいビジネスの場が一気に和やかになった。
○…38歳のとき、転勤で横須賀へ。定年を間近に控えた1995年、故郷・神戸に一時的に赴任していたところを襲ったのが阪神淡路大震災だった。特に甚大な被害を受けた神戸に震災後1年半留まり、被災者として復旧作業にあたった。一方で、身を粉にして復興に尽力するボランティアの人たちに感服し「いつか恩返しをしたい」と心に誓った。横須賀に戻り「自分に何ができるのか」と考えたとき、思い浮かんだのはいつも折り図を見ながら新作に取り組む自分の姿だった。
○…震災から4年、一念発起し折紙講師の資格を取った。地元自治体の同好会を中心に老人ホームの高齢者や子どもたちに折紙を教え始めて早15年。夕飯を忘れて作品作りに没頭することもあるという自身に、「妻はさすがに呆れているかも」と冗談めかして微笑む。昨年、長年の社会福祉活動が認められ、市長表彰を受けた。「複雑な折り図を読み解く難しさと、完成した後の達成感、この両方が面白い」と満面の笑み。手から手へ、場所や世代を超え、日本の伝統文化が絶えぬよう、「折紙の伝道師」としての役割を担う。
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