5月7・8日、神奈川芸術劇場で行われる「黒船がやってきた」の作家で演出家 横田 和弘さん 田浦在住 58歳
「演じる」それが答えだ
○…県下で活動する20の地域劇団のメンバーを束ね、自身が手掛けた脚本と演出で大舞台に挑む。演目は「黒船がやってきた」。無血で結ばれた日米和親条約の真相を、人間不信の女子高生が猿島で出会った一匹の白猿と時空を遡って解き明かす、という奇想天外なストーリーだ。間近に迫る公演日。個性派揃いの劇団員が本気でぶつかり合う稽古場は今、戦場と化している。だが、その熱気と気迫にはいつもと違うものを感じている。
○…上演か中止か。先の震災後、劇団員らと膝を突きあわせて何度も議論した。押し寄せる被害報道に胸を痛めながら、演劇の意義をかつてないほど真剣に考えた。芝居に出来ることはなんだ、と。苦悩の末の結論は「演じる」。今、芝居を止めたら、世の中の自粛ムードに拍車をかけてしまうという意見でまとまった。「人々の心を満たすことをずっとめざしてやってきた。ここで引いたら芝居を続けてきた意味がない」
○…大学時代から芝居一筋。これまでに関わった舞台の数は200を優に超える。「1本つくるとまたゼロから」という特殊な世界は時間と経済的負担が尋常の沙汰ではない。絶えない苦労に「これで最後にしよう」と毎度のことのように思うが、幕が閉じるとまた次へと走り出してしまう。「衝突もある。共感もある。連帯感もある。芝居は人と人とがつくる根っからのアナログ。だから面白い」と尽きない魅力を語った。
○…1300人収容の神奈川芸術劇場(KAAT)は、演劇人なら一度は踏みたい憧れの舞台。「我々の前が三谷幸喜作品で、その後が宮本亜門作品。この上ないプレッシャーとハードル」と苦笑いするが、巡ってきたチャンスに全力で挑む。芝居づくりに関わる者は常にポジティブであるべきというのが持論。どんなことがあっても芝居は続けるのだ。
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