朝8時、店のシャッターをあげるのは、社長である自身の仕事だ。「1分でも遅れたらダメ。常連さんが来ちゃうから」。エプロンを掛け、開店と同時に戦闘モードへ突入する。
とはいっても、店頭に立つ表情はとても柔和。お客さんとの会話に花を咲かせ、自らも笑い声を店内に響き渡らせる。「お客さんのおかげで毎日楽しく商売ができている。大変な時期があったので」
2008年12月、社長であり最愛の夫が病死。酒店に嫁いで30年、店を支える立場から一転、引っ張っていかなければならなくなった。悲しみに暮れながらも、葬儀翌日には店を再開。「やるしかなかったのよ。続けるしか。お客さんに迷惑はかけられないから」と振り返り、師走の繁忙期を乗り切った。3カ月後には都内で働いていた長男が店に戻り、厳しかった売上を2人で徐々に盛り返してきた。
「1日1日が真剣勝負。そうしないと商売は成り立たない」。午後8時の閉店後、思わず居眠りしてしまう時間が”至福の時”なのだとか。
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