水曜日の夜、お堀端をぞろぞろと歩いて三の丸小学校に吸い込まれていく人たちがいた。
公募の市民合唱団が半年の練習を経てプロのコンダクター、ソリスト、オーケストラと大曲を演奏する「市民による小田原音楽フェスティバル」。芸術文化創造センター建設応援イベントと銘打った市民による合唱は来年3月5日の本番をもって11回目を数える。
歌う曲は、合唱の金字塔ともいわれる『大地讃頌』を含んだ混声合唱のためのカンタータ『土の歌』、混声合唱組曲『旅』。いずれも佐藤眞氏の作曲で、本番では佐藤氏が直々にタクトを振る。10月12日、公演に向けた練習が始まった。
10月19日、練習を担当した作曲家で指揮者の富澤裕(ゆたか)氏は、ソプラノ、アルト、テノール、バスの個別練習にも、全体の合わせにも全身全霊で打ち込み、歌い方、歌詞の一つ一つに対して指導した。それに応えるかのように団員は、片手に楽譜、もう一方には鉛筆。富澤氏が解説する作曲者の意図、強弱の塩梅を聞き漏らさないよう書き留めていた。繊細なピアニッシシモのハミング、眉間にしわを寄せ、裂けんばかりの大きな口を開けたフォルテなど、作曲者の理想に近づけるべく練習は進んだ。
「歌が好きなら誰でも」
団員は20〜70代と幅広く、近隣他市からも集まり、この日は120人弱が参加した。参加費は1万4千円。それを払ってまでも歌いたいという意気は、合唱の質に影響する。毎年参加している人、学生時代に合唱部に所属していた人などベテランは多いが、事務局長の磯部波男さん(69)は「音楽が好き、歌が好きな人なら初めての方でも歌えます」と話し、事実、3分の1はここが初めてという人たちだ。高齢などで団を去る人は毎年いるが、同様に新しく入ってくる人もいる。目下、180人の定員に達しておらず、特にバス、テノールが少ないという。
練習後、松田町から参加する女性は「曲を知っている分、楽。でも、富澤先生の解釈や指揮は私の知っているものとは違うので毎回引き込まれます」。藤沢市から参加する男性は「有名な指揮者、オーケストラと歌えることが魅力。今回は作曲者の指揮で歌えるということで、もうこれは絶対参加と決めた」と話した。
現在も団員を募集中。練習は主に毎週水曜日の午後6時45分からで、場所は三の丸小学校(一部除く)。次回の練習は11月2日(水)。
問合せは磯部事務局長【電話】0465・35・0454へ。
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