「国友はこれで満足できるレベルの選手じゃない。もっと上をめざしてほしい」。相洋高サッカー部の綱島陽介顧問(41)は、教え子で今季からJ1湘南ベルマーレに加入する桐蔭横浜大学4年の鈴木国友さん(22)にエールを送る。「点が欲しくてしょうがない点取り虫」。中学3年だった鈴木さんのプレーを目にした時の第一印象だ。貪欲にゴールを狙う姿勢に一目惚れし、「うちで育てたい」と相洋高へ誘った。
実力は期待どおり。あらゆるトレーニングに全力で取り組む姿勢は目を見張るものがあった。「たぶん、それまでは好きなことしかやってこなかったタイプ」。しかし、高校では自ら居残り練習に励み、苦手だったヘディングや左足のキックも克服。そんな教え子の姿に目を細める日々に、突如ある事件が起きる――。
指導の信条は、サッカーを通じて人間性を高めること。「決められたルールの中で発揮するのが個性で、ルールを逸脱するのはわがまま。学校のルールも守るように」。あろうことか、そう部員に語った翌日のこと。雨天で小田原駅から学校までの坂道を面倒に感じたのだろうか、2年生だった鈴木さんら部員数人がタクシーで登校してきたのだ。
校則違反に、「サッカーさえやっていれば良いわけじゃない。部活をやめろ」と叱りつけたが、しばらくして「頭を丸めて奉仕活動をする」と謝罪しに来たという。「違反と無関係な部員まで一緒に坊主頭になって。良い仲間に恵まれていたな」と、今では教え子たちとの懐かしい思い出のひとつだ。
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小学4年で出会い、大学卒業まで続けたサッカー。化学の教師として、10年程前から相洋高で教鞭を執る。教員1年目からサッカー部顧問を務め、指導者のライセンスも取得。「部員たちの勝ちたい気持ちには、全力で応えたいから」と、休日返上で名門校の監督の元へ出向き、教えを乞うこともある。
そんな甲斐もあり、一昨年には全国高校サッカー選手権神奈川予選で創部史上最高の準優勝を収めた。しかし、やはり指導者として一番の喜びは「サッカーを通じて人間性を高め、社会で活躍できる人間を育てること」。だが、不思議と人間性が高まればサッカーの実力も伸びるらしい。
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