横浜出身の航空自衛隊戦闘機パイロット・稻留仁(いなどめひとし)2等空佐(43)が、空自の中でも精鋭パイロットが担う6機の曲技飛行隊「ブルーインパルス」で4月から1番機飛行隊長を務めている。
同隊が上空に描くスモークでの白い軌道は、1964年の東京五輪開会式で5つの輪を描くなど、様々な場面で見上げる人たちの心を魅了してきた。自衛隊基地での航空祭を中心に、全国のイベントでその技を披露するシーズンが5月から始まっている。「夢や感動、希望、笑顔を届けられるような隊でありたい」
音速の世界は最大7G
音速に近い高速度で6機が連携して魅せるアクロバット飛行には、高い技術だけでなく7倍にもなる重力(7G)に耐えうる体力が要求される。自身の第一印象も「パイロットの目から見ても異次元。あんなのできるのかなと思っていた」と当時を振り返る。
昨年、前隊長から技術を継承する「隊長付」としてブルーの一員に選ばれ、その技を1年かけて体に覚え込ませた。1番機は6機の先頭で全機の飛行の基準となる重要なポジション。「高度や速度はもちろん、風や雲、それから他の機体の状況も含めた、空全体を常に把握していないと」。全神経を集中させて飛行しているが、その一方で、「パイロットは皆、空が好きなメンバー。ちゃんと自分たちが笑顔でいることも、魅せるという上でとても大切」と表情を緩める。
アルバイト時代を経て
横浜で生まれ育ち、上の宮中学(鶴見区)、港北高校を経て、日本体育大学へ。体育教師を目指して教員免許も取得したが、たまたま体験したグライダーで「空の気持ちよさ」に出合った。
2歳上の兄・智(さとる)さんと同じ戦闘機パイロットを目指して、ゴルフ練習場などでアルバイトをしながら浪人時代を過ごし、3度目の試験で念願のコックピットに辿り着いた。「初めて教官なしで1人で飛んだ時に、『あぁこれを求めていたんだ』って実感して嬉しかったな」
「会場で感じてほしい」
3年間の任期中は松島基地(宮城県)の官舎に暮らすが、まとまった休みには家族と車で横浜にも帰省している。小学5年と2年の息子たちにとっては「普段は優しいけど、人を傷つけたり物を大事にしない時には、厳しい父ちゃん」。
シーズン中はほぼ毎週末、文字通り全国に飛び、「できれば会場で実際に感じてみてもらえたら」。強くしなやかな飛行で、空の魅力を伝えていく。
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