名木古木【11】 長昌寺「ビャクシン」 弥生時代 枝葉を炊事に利用 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
長昌寺の「ビャクシン」(柏槇)は、樹齢700年余りを経た巨樹で、樹形も見事です。区内では他に光傳寺と、六浦町地区の2か所で、それぞれ名木古木に指定されています。別名「イブキ」(伊吹)といい、太平洋沿岸に多く分布しています。強風にあたる場所では、幹は匍匐状になったり、老木になると幹が捩れたりして、風格をさらに増していきます。4月頃小枝の先に、黄褐色の雄花と淡緑白色の雌花を咲かせ、球果は球形で白っぽく、翌年の秋に黒く熟し、表面に白粉をつけます。鱗片状の葉と針状の葉とがあります。
弥生時代の遺跡から、土器とビャクシンの枝葉が出土され、炊事に利用されていたことが判明しました。出土した土器は3つ重なって、中間の器の底に穴が空いており、そこにビャクシンの枝を入れ、下の器に水を、中と上の器に穀物や豆類を入れて蒸したようです。空気抜けと蒸気抜けのために枝葉を利用する方法は、中国から伝わったもの。炊事する、つまり「カシグ+葉」の枝ということで、「柏」の字が名前に使われました。また別名のイブキは「息吹き」で、湯気が噴き出る所にパッキング用として使われたからです。また同じ時期には、南方からホオノキやオオタニワタリ等の大きい葉に、穀物類を包んで蒸し焼きにする炊事法も日本へ伝わってきました。
次回は「ソテツ」の予定です。
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