物語でめぐるわが街 『弩(ど)』著・下川博 講談社文庫文・協力/金沢図書館
昨年国宝に指定された称名寺蔵県立金沢文庫蔵管理の「金沢文庫文書」は、もとは称名寺に伝わった古文書で、鎌倉時代中期から南北朝時代までの公私さまざまな文書が含まれています。そのうち「因幡国智土師郷上村年貢結解状」は、当時寺の領地(荘園)だった因幡国智土師郷(現鳥取県智頭町)の康永元(1342)年の年貢決算書で、盗賊の襲来に対し村人たちが雇った用心棒8人への賃金が記録されています。この文書は黒澤明監督「七人の侍」のストーリー発想のきっかけの一つになったのではないかともいわれていますが、今回ご紹介する本も同じくこの文書から物語を膨らませています。
称名寺から智土師郷へ雑掌(領主の代官)代理としてやってきた僧光信は、この村を桃源郷にしたいと、税を免除したり持ってきたものを与えて村人から慕われます。村の百姓吾輔は光信の援助により商売をはじめ村は豊かになります。やがて鎌倉時代が終わり南北朝時代となる混乱の中で、その豊かさゆえに村は浪人集団から狙われるようになり、光信吾輔ら村人は力をあわせて新型兵器「弩」を使って闘います。
金沢周辺が舞台ではありませんが、混乱する中世に力強く生きる庶民の生きざまに引き込まれてゆく時代小説です。
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