能楽師として伝統芸能の普及に努めている 加藤 眞悟さん 神大寺在住 56歳
「舞って舞って あの世まで」
○…現存する世界最古の音楽劇「能」の舞台で、シテ方と呼ばれる主役を演じる。所属団体の月例会などに出演するほか、近年は「古典の様式美」を尊重しながら、復曲や新曲にも挑戦中。長年の功績が認められこのほど「重要無形文化財 能楽の保持者」に認定された能楽師だ。「敷居が高いと思われている日本の伝統芸能を、もっと身近に感じてもらいたい」
○…平塚市の酒屋の次男として生まれた。青春ドラマに影響され、剣道部やブラスバンド部に所属。ギター片手にオーディション番組に参加したこともある。飽きやすい性格を克服しようと、高校進学時に「自転車で通い続けること」を誓った。次の日から3年間、雨の日も雪の日も休むことなく隣町までペダルを漕ぎ続けた。「やればできる」と思えるようになった。
○…高校卒業後、父の勧めで長野県の老舗ワイナリーで修行。1年後に大学受験を決意し、日本大学に進んだ。「サークルで能楽と出会った。『能楽部』ってくらい熱中したよ」と振り返る。関東学生連盟の執行部を務め、卒論テーマも能の大成者・世阿弥を取り上げた。教師になろうと教育実習も行っていたが、在学中に現梅若万三郎氏に師事し内弟子となった。
○…結婚を機に横浜へ。神奈川区内には15年前から住んでいる。自宅などで愛好者に指導を行う「眞謡会」を発足したほか、神奈川や菅田地区センターで講座を設けるなど、地域における伝統芸能の普及に尽力。海外公演にも多数参加し、学生には「日本の歴史や文化を語れる大人になってほしい」と語りかける。
○…気晴らしは自転車。多忙な合間を縫って、鶴見川のサイクリングロードを疾走する。怪我で能楽から距離を置く長男の動向が気がかり。「できれば継いでもらいたい」と本音もちらり。今後については「『舞って舞って あの世まで』。いつまでも舞台に立っていたい」と背筋を正した。
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