中小事業主・起業をめざす人へ 第7話 不適切な処理で生む利益 ―東芝問題について考えるーあつぎみらい21 橋向 博昭
●東芝の不適切会計処理問題は、片付いただろうか?
東芝の不適切会計処理問題についてですが、この原稿を書いている段階では、第三者委員会の報告書が出て、歴代の社長を含む複数の取締役が辞任したが、「監査法人が知らないはずはない。」とか「第三者委員会の動機解明が甘い」とか、「社外取締役はお飾りだった」などと まだまだ世間は収まらないようです。不適切な会計上の処理で、あるはずの損失を先送りしたり、ないはずの利益を作り出したりしたと言われる今回の事件、不正会計なのか粉飾なのか様々な議論がある中、経営者は何としてでもより多くの、あるいは目標として公表した、当期利益を実現することに強くこだわったことが、ことのきっかけであることは明白です。
●経営者がこだわるべき「利益」とは
今回は「利益にこだわることは悪いことなのか?」について、考えてみたいと思います。「そもそも」利益とは一体なんなんでしょう?「商売の目的は、利益を上げることである。」「儲けなければ意味がない。」と言う人がいますが、「利によりて行なえば、怨み多し」とも言いますね。「適正な利益なら良いが、儲け過ぎはいけない。」とわかったようなことを言う人もいますが、「適正」「儲け過ぎ」の基準はどこでしょう。ご存知の方も多いとは思いますが、実は、この疑問についての明快な見識が、かのドラッカー氏によって60年代に示されています。
●ドラッカーは言いました。
企業の目的は新たな顧客を創造することであり、利益とはそのパフォーマンスを測る指標である。同時に、利益は企業が事業を継続していくために必要不可欠な、未来の費用である。と言っています。私は、これを喩えて言うと、利益は試験の点数だと考えています。勉強する目的は学問知識を身につけることですが、その成果を測定し比較的公正に評価する方法として、考課 試験を受けその結果を他人や過去と比較します。つまり点数(利益)は、勉強(経営)の成果を評価するための基準です。また、合格点を得ることで次の過程へ進むことができます。つまり、点数(利益)は次の過程(次の事業)への必要不可欠な要素でもあるのです。考課試験は万能ではありませんが、おおよそ勉強の成果を示していると期待できます。しかし、たまたま「山」が当たっただけのこともありますし、今年の問題は特別難しかった、なんてこともあり得ますが、まあ、いろいろ工夫しながら、利用され続けています。進学や進級をするためには、合格点が必要です。したがって、自ずと勉強は、試験の点数を稼ぐことに向きがちです。しかし、勉強の実を上げずに(顧客の新たな価値を創造もせずに)、試験の点数(利益)を追い求めるのは、山掛けや一夜漬けで試験を乗り切ろうとすることと同じで、勉強が身につくことはありません。もちろん、その能力は緊急避難的に使う上では、非常に重要なものではありますが。
●カンニングはいけません。
しかしながら、カンニングなどの不正行為で点数を稼ごうとすれば、それは明らかに許されることではありません。かつてのホリエモンも村上ファンドも、今回の東芝の経営陣も、このカンニングにあたる行為が問題なのだと言えます。さらに言えば、試験の採点に重要な役割を果たす、監査法人の責任も免れないと思うのですが。経営者は、新たな顧客を創造することにこだわり、その結果の当期利益は、自身への評価の結果として、甘んじて受け入れるしかないのです。そして、その結果を仔細に 分析し、マーケティングとイノベーションの能力を高め、大いなる利益を生む新たな市場を創出することにこだわるべきだと考えます。「社長、その利益確保は、何のためですか? 実力をごまかして、点数だけを稼ぐものではないですか?」といえる人が、東芝にはいなかったのか、それとも、言った人はみんな飛ばされたのかな。 筆者/橋向 博昭(中小企業診断士)※あつぎみらい21コラム「経営講座」より
☆このコーナーは中小企業診断士を中心に、県央地域の振興のために活動している団体「NPOあつぎみらい21」の協力による短期連載です。
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4月19日