曽我梅まつり実行委員会の会長 穂坂 信雄さん 市内曽我別所在住 67歳
梅の老木に教わる人生
○…のどかな自然が広がり牧歌的な雰囲気が漂う下曽我が、一年でもっとも賑わう季節がやってきた。富士山や箱根の山々を背景に広がる梅林を会場に、今年で45回を数える梅まつり。約3万5千本の梅は白梅が中心だが、「一面に広がる白い景色に紅梅もポツリポツリと花を咲かせる。その姿は、山から見下ろすと小紋の着物のように美しい」。梅林を歩けば、ほのかな香りに包まれ、「ハイキングもウォーキングも、一日中楽しめる」と、故郷の梅林に誇らしげだ。
○…まつりでは、恒例の流鏑馬や寿獅子舞に加え、今年は落語やういろう売りの口上といった新企画も登場。「薄めのだしに梅肉をといて二度楽しめる」。会場で販売する『梅の香うどん』も、実行委員らが試行錯誤の末誕生させた新メニューだ。「来場者に下曽我の魅力を存分に感じてもらうには、長時間滞在してもらわないと。そのための仕掛けづくり」。皆で商品知識や接客方法についても学ぶなど、伝統にあぐらをかくことなく新しいことに挑み続けている。
○…小田原で育種された品種「五郎梅」。その原木が自宅の庭にそびえる。樹齢145年超。幹の空洞化も目立ち、「さすがに傷んできた。もう、いつ倒れてもおかしくないかな」。何本もの支柱に支えられて立つが、今なお新芽を吹き花を咲かせる。59歳で公務員を退職し、江戸時代から続く農家を継いで畑仕事に精を出す日々。「働けるうちは一生懸命働かなければ」と、家族同様の老木を愛おしそうに見上げる。
○…後継者不足や人口流出といった悩みも抱えるが、豊かな自然や数多くの史跡、そして現代社会が失いつつある人の温もりが残る地域。「昔からほとんど風景が変わらない。路線バスの本数も減ったけれど、人情味がある土地ですよ」。生まれ育った下曽我への愛着が深いからこそ、地域を盛り上げようとまつりの成功に向けて奮闘している。
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