第3回東日本大震災スタディツアー実行委員会の委員長を務める 富樫栄広(えいひろ)さん 早川在住 55歳
若人の目を地域に
○…「出発前は遠足のノリ。親にすすめられて参加する生徒が多いのでしょう、きっと」。小田原市の中高生に、被災地の現状を体感してもらうことを目的とした「東日本大震災スタディツアー」も今年で3回目。はしゃいでいた生徒たちが、惨状を目にし、当事者から話を聞くうちに、みるみる真剣な顔つきへと変わっていく様子に毎回開催の意義を感じる。「路地裏に一歩入れば、いまだ手つかずの荒れた地域が多くある。報道では伝わらない現実を自分の目で見つめ、感じてほしい」と、一週間後に迫った出発を前に抱負を語る。
○…「自宅と会社の往復だけではつまらない」と積極的に地元と関わりをもち、これまでに所属した地域団体は約20。おかげで地域に顔なじみが増え、多くの飲み仲間もできた。仕事から帰宅後も週末の会合に向けた資料づくりに追われる日々に「ボランティアが趣味と言ったら格好良すぎるかな」とおどけるが、「被災地には自分を犠牲にして復興に奔走する人がいる。そんな姿を見たら、やっぱり地域のために頑張らなきゃ」と気を引き締める。
○…結婚を機に横浜から小田原へ移り住んで22年。通勤電車の車窓に相模湾の眺めが広がり始めると、地元へ帰ってきた安堵感が広がる。「地域の代表が集まる会合ではライバル心がうずいて、地元の早川を自慢したくなる。負けたくないんです」。今ではすっかり小田原が故郷になった。
○…多くの児童が犠牲となった大川小学校(石巻市)を訪問すると、大半の生徒は言葉をなくし、黙り込む。被災地で見聞きする現実はあまりにも衝撃的だ。しかし、「若いうちに現実を知ることは大切。被災地では地域との関わり方を学ぶ機会も多い。そんな視点を将来地元に還元してくれたら」。目下、地域活動の課題は若手の後継者不足。そんな中、復興の進捗を確かめたいと、スタディツアーにはリピーターが増えていることに頼もしさを感じる。
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