横浜市 災害時医療体制を見直し 来年度の施行目指す
横浜市は現在、来年度からの施行を目指して「横浜市防災計画」の改定を進めている。その中の一つに、災害時医療体制の見直しがある。現行の「地域医療救護拠点制度」を廃止し、被害の大きい地域に対し優先的に医師などを派遣する体制へと調整を行っている。東日本大震災の教訓が生かされている一方、新たな対応策の周知が課題となりそうだ。
18年前に起こった阪神淡路大震災後に定められた「市防災計画」。2011年の東日本大震災を契機に見直しの機運が高まり、条例施行以来初の大幅改正となる。これまでの防災計画では発災時に市内146カ所の小中学校に医療資源を集中させ救護にあたる「地域医療救護拠点」を設け、発災から3日間程度、各区の医師会らが応急医療を行う救護場所としていた。
しかし、市が行った市民意識調査で「医療救護拠点がどこにあるのか知らない」という市民の声が多かったことや、「東日本大震災」の教訓から得た「限りある医療資源を効率的に使う」という方針から、「待つ」体制を、被害が甚大な地域に医師などで構成される医療救護隊が「向かう」仕組みに改善したい考えがある。
新しい災害時医療体制案では、食料や防災資機材を備蓄した市内453カ所の地域防災拠点(小中学校に設置)をベースに、各区の災害対策本部が傷病者の数の大小で緊急度を判断し、救護エリアを策定、医療チームを派遣する。区から連絡を受けた市は、各区の被害状況を見て、必要とあれば区を超えた救護活動を指示する。これにより、市は大規模な被害を受ける可能性が高い人口が密集する都市部などに医療資源を集中させることができるようになるほか、医師らの力を効果的に生かせられるようになると考えている。これまで拠点に常備していた医薬品などは使用期限が限られていたため、毎年度ごとに新しく替える必要があったが、その分のコスト削減にもつながる。
市民への周知が課題
課題となるのが新しい体制の「市民への周知」だ。施行を目指す4月までの期間に周知を図るのは難しいとの声もある。医療救護隊に所属する医師の一人は「1月中旬の今でも、よく修正点を聞いていない。大丈夫なのか」と話す。防災拠点運営委員会の一人も「まだよく知らない」としている。
市は「新体制では最も救護を必要としている人に医療の手を差し伸べることができる。市民には市報や各医療団体の広報紙等で伝えていきたい」と説明する。
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