山野に咲く気品ある王様 風に揺らぐヤマユリ 日本自然保護協会自然観察指導員金子昇(富岡西在住)
ヤマユリほど香気を漂わせ、大きく立派な花は見当たらず、まさに王者の風格そのもの。ユリの語源は、風に吹かれると花がゆらゆら揺れるところからきています。揺れるのは花弁だけではなく、雄蕊(おしべ)の葯(やく)(花粉を入れる袋)がT字形で、チョウがどんな角度で触れても素早く動いて、体に花粉がたっぷりと付くようになっています。さらに花粉には粘着性があるため、昆虫や雌蕊にしっかりと付着します。
ユリの花粉は大変厄介なもので、衣服に付くと水で洗っても取れず困りものです。この花粉を落とすには、有機溶剤のアセトン(身近なものでは、マニキュア用の除光液)で洗い落とすことができますが、その衣服が有機溶剤に侵される可能性があるので、注意が必要です。このため、花屋に並ぶユリの女王「カサブランカ」(ヤマユリからの改良品)等のユリ類はほとんど花粉の部分を切り落としてあります。しかし私たち男性にとっては、こうした大事な雄蕊を抜かれ、去勢されたユリは見るに忍びません。
またヤマユリの球根は食用や薬用に利用されます。この球根は「百合」(ひゃくごう)という生薬になり、ここからユリの漢字が生まれました。種子から育てると、発芽に2年、さらに開花に5年以上もかかります。
金沢区内の山林で観察することができますが、年々その数が減少しています。
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