区内で活動する「MM思い出返し隊金沢分隊」が、東日本大震災で津波に襲われた地域で見つかった写真の洗浄を始めて丸半年が経った。週3回の活動には、これまでのべ435人が参加。約7000枚の洗浄を行ってきた。メンバーは今後も活動を続ける考えだ。
ある土曜の昼下がり、三菱重工業横浜製作所(幸浦)の会議室には、刷毛を片手に作業する社員の姿があった。傍らに置かれた段ボールに保管されているのは、がれきの中から警察や自衛隊が探りあてた「思い出」。その1枚1枚と向き合いながら、作業は進む。
現状の写真をデジタルカメラで撮影した後、水やアルコールで洗浄。乾燥させて、新しいアルバムに収める。「地震から1年。中には、状態が悪く、ほとんど判別できない写真もあります」と話すのは、中心メンバーの中村義行さん(60)。「劣化の進行を止めるために、少しでも早く作業しないといけないんです」
この活動は、同社の横浜ビル(中区みなとみらい)で昨年8月に始まった。被災地域で写真洗浄ボランティアに参加した社員の一人が、横浜でも実施しようと提案。県内のフィルム会社から資材の提供を受け、実現した。当初から活動に参加していた中村さんらが、「こっち(横浜製作所)でもできるなら」と「金沢分隊」を発足させたのは9月。口コミで社内外から有志が次々に集まり、現在は約50人が活動している。メンバーの長谷川真里子さん(40)は、「地道な作業ですが、現地のみなさんから感謝の言葉をもらうと励みになります」と話す。
この半年間の活動では、名取市閖上地区と陸前高田市で見つかった写真を洗浄。作業を終えたものから順次送り返している。
震災「過去ではない」
被災地域では、写真が戻ってきても、まだ取りに来る気になれないという住民もいるという。「1年たっても、震災は過去ではない。むこうでは『進行形』の話なんです」と語るのは、何度も現地に足を運んだ大庭竜一さん(48)。震災が風化しはじめていることを危惧する。「地震を忘れないことが一番大事です」
一方、写真洗浄ボランティアを行う企業や団体は減少している。労力も人手も必要なため、続けられなくなることが多いという。分隊内にも、作業場や人手をどう確保していくかという不安がある。「でも、こちらが始めたことを勝手にやめるわけにはいかない」と大庭さん。処理が必要な写真はまだ多く存在することから、活動期間の目安としている6月以降も現地からの要請があれば洗浄を続けていくという。
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