金沢区釜利谷東の小泉住宅に新たなコンセプトを持ったアパートメントが誕生する。名付けて「八景市場」。アトリエや工房に使えるスペースがある住居棟に加え、別棟にオープンラウンジを設置し、地域のつながり醸成を狙う。建物を披露する11月17日(土)は「上棟市場」と題し、現場見学会や交流会、セッション(定員有)が行われる。
「八景市場」という名には、人と物の交流地点だったかつての賑わいを取り戻したいという思いが込められている。
八景市場のオーナー、平野芳範さん(73)の父親は、戦後間もないこの地に「釜利谷日用品市場」を作った。一帯は戦争の引揚者住宅。食料や衣類、雑貨など生活必需品が並んだほか、銭湯や印刷所もあったという。「釜利谷の中心として賑わった。当時は、白山道から買い物にくる人もいた」と芳範さんは振り返る。だが、1980年代になるとのどかな風景は一変。金沢文庫駅前の開発が進み、釜利谷日用品市場は衰退していく。87年に市場を閉鎖し、翌年、500平方メートル強の敷地に2棟のアパートを建てた。
食でつながる場に
だが時代は流れ、建物は老朽化し入居率は50%に。「人口が減っている中、賃貸だけでは難しい」と考えた息子の健太郎さん(41)は、2年かけて構想を練り、敷地内の1棟と青果店を解体し、八景市場の建設に着手した。
コンセプトは「食」を通した「コミュニケーション」の場。健太郎さんは「食を通すと自然と会話が広がる。別棟にキッチン付きのラウンジを作り、交流の拠点にしようと思った」と話す。飲食店や農家、地域を巻き込み、地域経済を活性化させるような催しを定期的に開催していく考えだ。
ラウンジ棟の横には、全7戸の居住棟が建つ。うち4戸はラウンジに面する1階をアトリエやスタジオ、工房などに利用できる作りになっている。「暮らしながら、地域の中で経済活動ができるように設計した」と話すのは、建築家の干場弓子さん(41)。製作物を販売したり、ワークショップを行ったりと使い方は居住者にゆだねられる。「時代に合わせ、昔のよさを現代版に翻訳しつないでいけたら」。現在、居住者を募集中。健太郎さんは「これから住む人たちと一緒に、ゼロからこの場を育てていきたい」と話した。
八景市場の物件詳細やイベントはホームページやフェイスブックで見ることができる。
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