可愛さの中に恐ろしさが潜む 「ネジバナ」は右、左どっち巻き? 日本自然保護協会自然観察指導員 金子昇(富岡西在住)
日当たりのよい草原に、ピンク色の「ネジバナ」が咲いています。ネジバナは名前のごとく、花が茎にらせん状に咲くラン科の仲間で、別名「モジズリ」といい、英名では「婦人の編んだ髪」という意味を持っています。モジズリとは「捩(もじ)れ摺(ず)り」の意味で、シノブモジズリはとして百人一首にも詠まれており、福島県信夫郡特産物の染め物のねじれ模様「シノブモジズリ」に基づいて、花序がもじれて巻く様子を表しています。
花は横向きにねじれて咲いていますが、これはハチなどが花の中に入りやすくするためと、全ての花が一直線で同じ方向に咲くと、バランスがとりにくくなるためです。しかし中にはらせん状にならず、直線状になる花も見かけます。また、右巻きと左巻きの割合はほぼ同じといわれていますが、富岡・並木・能見台地域では右巻きの方がやや多いようです。
一つの小さな花にできる種子は、数十万個もできるので、一個の種子は非常に小さく、発芽に必要な養分を持っていません。そこでネジバナは、ラン菌というカビを根に寄生させて、種子の中に入り込んだ菌糸から栄養を吸収して発芽させる戦略を取りました。しかも発芽後、自分で栄養分を吸収できるようになると、このラン菌をも養分として食べてしまいます。見かけは可愛らしい花ですが、ネジバナの正体は根性が相当「ねじれて」いるようです。
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