中区・西区版 掲載号:2017年1月1日号
  • googleplus
  • LINE

完成350周年 1667→2017 吉田新田の謎に迫る 歴史の専門家に聞く

文化

 中区と南区にまたがる「吉田新田」は、2017年で完成350周年を迎える。10年以上におよぶ難工事の末に完成した干拓地は、時代の流れとともに水田から町へと姿を変え横浜開港の礎となった。また、難工事ゆえに”おさん伝説”さえ生まれ、今日に語り継がれている。そこで、吉田新田の歴史的背景に詳しい、横浜開港資料館=中区日本大通=の斉藤司主任調査研究員に話を聞いた。

謎1 なぜ横浜で新田開発?

 吉田新田は、現在の日枝神社=南区山王町=を頂点に大岡川と中村川に囲まれた釣鐘形の土地。もともと大岡川が注ぐ入海だったところを、江戸の石材・材木商の吉田勘兵衛が中心となって埋め立てた。

 新田工事は1656(明暦2)年に始まり、大雨で潮除堤が壊れるなど困難を極めたが、10年余りかけ1667(寛文7)年に完成する。

 斉藤さんによると、江戸幕府誕生(1603年)にともない江戸の町は急成長、そのような時代において石材・材木を扱う勘兵衛は商売に成功する。江戸の開発がひと段落した1650年ごろ、勘兵衛は「商売のリスクを分散する発想で江戸での事業のほかに、新田開発にも目をつけたのではないか」と斉藤さん。江戸の人口が爆発的に増加、食料を供給する新田開発は重要な事業だった。

 そこで白羽の矢が立ったのが、大岡川が注ぎ埋め立てやすいと踏んだ入海だった。総事業費は8千両で、現在の貨幣に換算すると8億円から16億円に値する一大事業だったようだ。

謎2 埋立土砂はどこから?

 約115万5千平方メートルにおよぶ広大な吉田新田。それを埋め立てた土砂は、現在の京急日ノ出町駅裏手の天神山、また入海を挟んで向かいに位置するJR石川町駅近くの大丸山あたりから掘削されたといわれている。斉藤さんは「土砂を運ぶ船を寄せられるところだった」と話した。

謎3 なぜ開港の地に?

 時代は江戸末期。吉田新田完成後も入海だった現在の横浜中華街あたりは、横浜新田に、現在の横浜スタジアムや市役所は太田屋新田として埋め立てられ、当初の入海はほぼ陸地となった。時代とともに横浜の人口も増え、水田ではなく町が拡大していく。

 そんな中、鎖国していた日本に砲艦外交で迫ってきた米国のペリー提督。1回目の上陸は、横須賀の久里浜。2回目は、江戸により近い場所を求めるペリーに対して、幕府が提示したのが寒村の横浜だった。

 斉藤さんは「沖合に黒船が停泊できる深さがあり、江戸からは離れている」と説明。また「トラブルを防止するためにも人が多い神奈川宿の近くは避けたい幕府の意向があったのではないか」と推察する。

 現在の象の鼻パークあたりに久里浜から移設した建物を設け、横浜は外交交渉の場となった。結果として、その外交交渉の場を提供できたのは、吉田新田をはじめとする新田開発があったからこそと言える。

謎4 ”おさん伝説”とは?

 吉田新田が難工事ゆえ地鎮のために人柱をたてたという”おさん伝説”。斉藤さんは「町の発展にともない関内あたりには芝居小屋など芸能が盛んになった。そこで地元を舞台とした話としておさん伝説が生まれたのではないか」と時代背景から読み解く。江戸を舞台とした「番町皿屋敷」(「お岩さん」)などと同じだと斉藤さんは指摘した。

謎5 吉田新田の歴史的意味

 現在、横浜の中心地である中区。開港当時は、寒村だったといわれている。

 市北部は江戸時代「橘樹郡」「都筑郡」であり、東海道の神奈川宿やその海に面した神奈川港、また帷子川に面した保土ヶ谷宿も橘樹郡の一部だった。一方、市南部は「久良岐郡」「鎌倉郡」に位置しており、同じ地域圏・経済圏ではなく、斉藤さんは「神奈川港で開港していたら、現在の北部のみで市が完結していたかもしれません」と話す。

 吉田新田がつくられたことで、結果論として港に必要な陸地を提供することができた。そして、開港地が横浜の中心になることで、北部や南部の富が集約する場所となり「結果的に、港を中心とした市域の広がりにつながった」と斉藤さんは指摘した。
 

斉藤主任調査研究員
斉藤主任調査研究員

ドコモスマホ教室

体験会やメールの使い方など、分かりやすく説明します

https://www.nttdocomo.co.jp/support/shop/search/shop.html?id=0300306919200

<PR>

中区・西区版のローカルニュース最新6件

伝統と若手のアイデア融合

ニューグランド

伝統と若手のアイデア融合

1月18日号

伯父の母校で「特攻」語る

本町小

伯父の母校で「特攻」語る

1月18日号

近代水道130年テーマに

横浜市民ミュージカル

近代水道130年テーマに

1月18日号

「人に寄り添う実践」

市民後見人

「人に寄り添う実践」

1月18日号

校内収穫米で餅つき

浅間台小

校内収穫米で餅つき

1月18日号

開幕戦で神奈川ダービー

JリーグYSCC

開幕戦で神奈川ダービー

1月18日号

中区・西区版の関連リンク

あっとほーむデスク

中区・西区版のあっとほーむデスク一覧へ

最近よく読まれている記事

コラム一覧へ

中区・西区版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2018年1月18日号

お問い合わせ

外部リンク