新型コロナウイルスの感染拡大を受け、歯科医院の受診控えが懸念されている。歯科医院では以前から感染防止対策を徹底しているにも関わらず、口の中を治療することから飛沫感染につながるといった誤った認識が広がったためだ。神奈川区歯科医師会の加来めぐみ会長は、「虫歯を放置することで重症化のリスクが高まるだけでなく、お口の中が不衛生だと様々な疾患にかかる危険性も実証されている」と警鐘を鳴らし、適切な受診を呼び掛けている。
加来会長によると、神奈川県歯科医師会が会員に対して行ったアンケート調査では、緊急事態宣言が出された4月以降の患者数は例年の6〜7割に減少したと回答する医院が多かったという。政府による外出自粛要請を受けて歯のメンテナンスや歯科検診をためらう患者が増えただけでなく、「歯科医院は感染の危険性が高いという誤解も受診控えにつながっているのでは」と指摘する。
しかし、歯科治療では患者の唾液や血液に直接触れながら処置を行う必要があるため、「これまでも徹底した感染症対策を取ったうえで診療を行ってきた」と加来会長は強調する。器具の消毒や滅菌、使い捨てマスクやグローブの使用といった対策に加え、頻繁な換気や検温による体調確認、待合室での密集を避けるための予約制限など、厚労省が定める「歯科外来環境施設基準」にのっとった運営に努める医院も多いという。
緊急事態宣言下の歯科業界では、緊急性の低い治療や定期検診、訪問診療などを延期する方針も示されたが、これらの対策を講じることで感染リスクを大きく減らせること、歯科医院が集団感染の発生源になったケースはないことなどを受け、通常の診療体制に戻りつつある。
誤嚥性肺炎など疾患リスク増加
受診控えが引き起こす問題はなにか。加来会長は「お口の中を不衛生にしておけば、誤嚥性肺炎や細菌性肺炎のリスクが高まり、ウイルス性肺炎が重症化しやすいことも知られている。口の中の衛生を保つことは、命を守ることにつながる」と話す。外出自粛が続いたことで子どもの口内環境を不安視する声もあり、「間食の回数が増えたり歯を磨かなかったりすれば、子どもの虫歯リスクも高まる」(加来会長)とし、日常の生活リズムを取り戻すことが重要という。
口腔内の痛みや腫れを放置すれば重症化する恐れもあることから、区歯科医師会では定期的な検診や虫歯、歯周病の進行を食い止めるメンテナンスの継続が重要とし、積極的な受診を呼び掛ける。加来会長は「必要な医療を受けることは不要不急ではない」としたうえで、「少しでも気になることがあれば、我慢をせず身近なかかりつけ医に相談してほしい」と話している。
神奈川区版のトップニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
<PR>