横内謙介の劇場シアター談義 ―16―
それは本当に無駄なのか
無駄だから廃すという考えは大事だと思う。税金が使われているなら尚更だ。でも一度取り潰したら、取り返しの付かぬ財産もある。
たとえば大阪市が支援打ち切りを表明している文楽。または青山劇場と円形劇場。その維持に多額の予算を必要とする。その割に費用対効果が少ない。それが潰そうとする側の論理。しかし文化芸術のどこをとらえて、費用対効果を計測するのか。芸術的感性の乏しい弁護士市長が理解できぬからと言って、潰すことが本当に世の中のためか。文楽という類い希なる芸術が出来上がるまでにどれほどの人の叡智と情熱と時間が注がれてきたことか。それを消すことは馬鹿でも出来るが、創り上げることは天才が集結しても容易ではない。そういう宝だ。
青山劇場はそもそも成り立ちが間違っていた。厚生省が何故、文化施設を建造管理するのか理解に苦しむ。だから仕分けの対象ともなる。でもまだ充分に使えるし、多くの演劇ファンにも愛されてきたこの劇場を今さら潰すことは、本当に得策か。劇場にイメージがあって、客が付いている。その財産が築かれるまでに、どれだけの演劇人の仕事があり、観客たちの拍手があったか。文化芸術の価値を本当に知っている政治家はいないのかと悲しくなる。
劇作家・横内謙介
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