♯みゅーじっくコラム♭ 音楽の森 ピアニスト 倉本 卓
先日都内で行ったリサイタルへ厚木からお越しいただいた皆様、大変有難うございました。シューベルトが死の年に書いた最後のピアノソナタ21番を取り上げましたが、全4楽章からなるこのソナタの演奏時間はおよそ40分。ジストニアという難病を患って以降16年間、長い作品は敬遠してきました。長時間弾き続けることで脳からのコントロールが伝わりにくくなり、手の自由が効かなくなるからです。今年になって脳神経外科から処方された内服薬の効果によりかなり回復してきたので、今回プログラムに取り入れました。手を故障する前から弾きたかったこの曲をようやく十数年後に弾けたということで、大変感慨深いです。
つい最近、ウィーン国立音大在学中に授業で一緒だったルーマニアのピアニスト「ミハエラ・ウルスレアサ」の死を知りました。まだ33歳という若さでした。彼女が幼少の頃、天才少女として日本のメディアにも取り上げられ、10代で巨匠アバドと共演するなど、音大入学前より知名度は抜群でした。死因は脳内出血、自宅で倒れていたそうです。私のジストニアの症状はピアノを弾く時だけが困難な病気です。しかし、彼女のように命を落としてしまってはどうしようもありません。これからもっと世界的に活躍したであろう彼女の人生。その無念さに心が痛みました。多少困難な手でも、彼女の分まで音楽を通して社会に貢献できるよう生きていきたいです。
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