日本の文化を紹介する「ジャパンエキスポ」に作品を出展している能面作家 大久保林朋(りんぽう)さん 平作在住 70歳
人生を彩り、充実の「顔」
○…パリで開催中の日本文化の祭典「ジャパンエキスポ」(7月4日〜7日)に能面作品3点を出展している。女性を表した小面(こおもて)、少年の十六、そして般若。知り合いの創作人形作家の紹介で、今回発表の機会を得た。現地への出発数日前にも、特別緊張した様子は無い。アトリエの壁いっぱいに並ぶ眼光鋭い面とは対照的に、当の本人は「(フランス人の)反応が楽しみ」と優しい笑顔を見せる。
○…能面との出会いは約30年前。小学校の教諭として教壇に立っていた。当時横須賀市内では、児童が木を彫って自分の顔を作り、その作品を廊下に展示するのが定番化していた。図工を専門にしていたこともあり、6年生の卒業制作にしようと考案。だが経験が無かったため、表情の出し方など的確なアドバイスができずにもどかしい思いをした。そこで「まずは自分が作れるようになろう」と習い始め、のめりこんでいった。
○…「いろんな局面で楽しかったですよ」。能面制作のことだけではない。人生を振り返ってそう思う。汐入で生まれ育ち、ガキ大将だった幼少時代。夢と喧騒が入り混じるドブ板通りでは、バーやキャバレーに氷を配達するアルバイトをした。商業高校を出て一度就職。その後大学に入ると演劇漬けの生活を送った。有名劇団のオーディションに落ち続け、そこで芝居を諦めた。小学校の事務員として働き始め、それから教員免許を取得。能面と出会い、今、アーティストとして海外で出展するに至った。
○…「人生何がチャンスになるか分からないです」。その言葉の通り、与えられたチャンスをものにしてきた。教員時代に「図工と体育は子どもを救う」をポリシーに教え子の個性を伸ばすことを貫いたのも、そうした思いを抱いていたからだ。作家として個展を開催したり後進を育成したりと、充実した日々を彩る現在。「横須賀でも個展をやりたいですね」。そのチャンスも、きっとやってくる。
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