津久井の絵本専門店で個展「真夜中のサーカス」を開いている 長澤星(せい)さん 汐入町在住 32歳
絵筆で命吹き込む
○…ふんわりと抱きしめたくなるような繊細な犬の毛並み、ぬくもりと奥行きのある質感―。津久井の絵本専門店「うみべのえほんやツバメ号」で、地元で初めての個展を行っている。
○…「ただただ絵を描くのが好きな子どもだった」。その様子を見て、両親が不入斗にある絵画教室(アトリエQ)に通わせてくれた。きれいに描くことを良しとせず、「物語から想像力を膨らませて絵を描くような、自由な表現を後押ししてくれる場所。この出会いが私の絵の原点」と振り返る。高校卒業後、専門学校でイラストレーションを学び、デザイン関連の仕事に就いたが、要望に応じて作ることに限界を感じた。「伝わる絵を描きたい」と5年前にイラストレーターとして独立。一昨年には、童話作家・角野栄子さんの物語に絵を描く機会にも恵まれた。今回の個展では自作絵本の原画を展示。空気感・透明感を表現できるとして、こだわっているのはアクリル絵の具だ。柔らかく温かいタッチの描写に合わせて、額縁も自作する。
○…独立と同時に、活動拠点を生まれ育った汐入に戻した。会社員時代は、「好きな雑貨や街行く人の配色など刺激が多いから」と都内で暮らしていたが、「ゆったりした日常の中で創作するのも私には合っているかも」と、足が横須賀に向いていた。横須賀は海や自然の気配を感じる街。幼い頃、自然観察会に出向いた小網代や息抜きに立ち寄る三笠公園、緑のあふれる自宅の周辺など、自分の育った環境は、少なからず作品の表現に繋がっている。
○…「やっぱり絵を仕事にしたんだね」と、今回の個展は学生時代の旧友との再会の場にもなった。原画に描かれた少女を見て、父親に「子どもの頃を投影しているね」と言い当てられた。そんな家族の応援は大きな励み。「絵とおはなし両方で惹きつけられる絵本作家」を目標に、力強く、そして繊細な”星”のように輝きを増している。
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