生まれ育った佐島をテーマに今月13日まで横浜美術館で個展を開いている 柵瀨(さくらい) 茉莉子さん 佐島出身 33歳
「縫う」で心つなげる
○…出身地である佐島をテーマにした個展「いのちを縫う」を横浜美術館で開催。大きな白い布に葉や花びらを縫い付け、また木や貝、魚の骨など自然物に穴を空け金糸を通すなど一風変わった創作物がズラリ。「亡き祖母との思い出や開発で緑を失った故郷への儚さを1針1針に閉じ込めた。皆さんも記憶の中の郷愁に浸ってほしい」
○…3人きょうだいの末っ子。2歳半で母と別れ、父方の家族や近所の「小母」から深い愛情を受けて育った。自宅では刺繍教室を営む祖母の針仕事を間近で見るのが日課だったという。小学生の時、静岡県の美術館に展示されたアイヌ民族の衣装を見て「生きる力を感じた」と心打たれた。以後デザインへの興味が深まり、高校生で服飾のコンクールに応募。「イメージは浮かぶが、形にするとおもちゃ箱をひっくり返したようになってしまって。モノづくりを本気で習得したいと思った」と当初は家具や器などの職人を目指した。
○…筑波大学芸術専門学群に進学。木工造形を学ぶため、全国各地の伝統工芸や材木店を訪ねる中で「木の面白さやぬくもり」を知った。そこに祖母から教わった「縫う」ことを組み合わせ、独自のスタイルを確立。在学中から一貫してこの手法にこだわり、今秋には文化の発展に尽力した人に与えられる神奈川文化賞未来賞を受賞した。「縫うことは生活の延長線上。私のさまざまな願いや祈りを残したい」
○…結婚を機に横浜へ。現在は夫と幼い子どもと4人で暮らす。大の釣り好きで、今でも佐島の海に訪れて魚を待ちながら創作のアイデアを練る。「ぎゅっと胸を締めつけられるような黄昏時の夕暮れ。そんな気持ちを縫って重ねた作品に共感するたくさんの人々の心とつながれれば」
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