小田原版 掲載号:2017年7月22日号
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特別鼎談 「三の丸地区の価値を考える」 鈴木悌介氏×外郎武氏×草山明久氏

経済

鈴木 小田原箱根商工会議所では昨年来から、小田原の観光をもう一度再構築していこうと動き始めました。いくつか活動する中で、皆さんにお知らせして知恵を集めなければならないことがありますので、観光に見識の高い外郎さんと歴史文化に見識の高い草山さんにお話しして、良い議論ができればと思います。

「40年、50年待たなければならない」

鈴木 まず7月5日に小田原城のリニューアル後の入城者が100万人を超えました。大変な数のお客様が来ていただいている中で、さらにそれを活かすため小田原城天守閣を中心とした一層の魅力向上が必要だと思っています。

 商工会議所では昨年11月に『平成の城下町・宿場町構想』を出し、三の丸地区、特に大手門が有った辺りを「もう一度歴史を感じる場所として再整備してはどうですか」とひとつの絵を示して提案しました。

 その中で調べたところ大きな問題が有ることがわかりました。”旧三の丸広場”の敷地内には、現在法務省関係の裁判所や検察庁の施設が建っています。検察庁の建物は老朽化が進んでいて早急に建替えなければならない。法務省としては現在の場所に建替えることを決定したか決定するか、という状況のようです。新しい建物が30〜40年もつとすると私たちが思うような歴史・観光の場所として再整備するには40〜50年は待たなければならない。その様な状況を多くの市民の方はご存知ないと思います。

 そこでお二人に、天守閣周辺の状況と、三の丸地区の価値や意味についてのお考えをお伺いしたい。

外郎 観光協会では今年4月からDMOの推進機能を強化する組織を立ち上げています。6月末にマーケティング調査(モニター会員2100人対象)をしたデータが上がってきました。その結果、認知度では断トツに小田原城で、「今後興味がある」「やや興味がある」でもトップが小田原城です。もう一つ、小田原に4回以上来ているリピーターが17・6%いらっしゃいました。小田原城に来ると小田原の”懐の深さ”がわかり、街歩きとかに結構来ているのだなと感じます。

 まずはお城のイメージで呼び込み、歴史や文化を知ってもらい何回も来ていただく。そうすると経済的な波及効果は凄くあるのだろうというのがマーケティングの分析結果になります。

鈴木 小田原の観光には「天守閣」というメガコンテンツがある。それが一番わかりやすく魅力的に映っているということですね。

外郎 小田原市が作られた『観光戦略ビジョン』(平成28年3月)にも、お城を中心に磨いていこうということがあります。ソフト面は民間を活用し、駐車場や施設などインフラは行政であったり、互いに役割分担しながら「天守閣」+「400年続いた城郭都市の構えとしての入口」を整備していくと良いのではないでしょうか。

鈴木 草山さんのお考えはいかがでしょうか。

草山 とにかく小田原は歴史のある町です。明治維新から150年、戦後70年が過ぎました。これまで西欧に追いつけ追い越せと外国文化を多く取り入れてきたと思いますが、オリンピック・パラリンピックを迎える今、逆に自国の文化や自分の町の文化を伝える時代に来ていると思います。

 お城を含めた小田原の魅力を堀り起こし、再認識していく。先人に思いを馳せ感謝をしながら次の世代に「何を作る」「残す」「繋げる」べきかを考えなければならないと思います。

鈴木 そうですね。調和のとれた上質な景観や、郷土の歴史や文化を感じ学べる場所は、なにより小田原市民にとってかけがえのない財産になると思います。

 さらに言えば、それを次代に繋ぐには地域の中できちんとお金が回っていくことも大切です。少し言葉は乱暴ですが「稼げる」仕組みを考えていくうえでも、お城周辺は貴重な場所だと思います。

草山 小田原の人口は現在約19万2千人。ピークから既に1万人以上減っています。少子高齢化も進む中で、今まで以上に地域でお金を循環させたり、ものをシェアしたりが必要になる。報徳流でいえば、町も自分たちも「分度」を引き直す時が来ています。そして、これは経済だけの話ではなく、歴史文化を大切にすることは、自分の暮らす町に愛着や誇りを持つ市民を増やすことにも繋がり教育文化などの面でも大切だと思います。

「思い」共有し市民の声を

鈴木 お二人のお話で、小田原の歴史遺産の大きな拠点が三の丸エリアだと改めて認識できました。しかし放っておくと「官」の施設ができ、天守閣が新しくなったのにそこから広がらない状況になってしまう恐れが非常に高い。では我々に何ができるでしょうか。

外郎 まず市民の皆さんが、改めて考える時間があったら良いのではないかと。小田原市も色々お考えになって法務省とのやり取りがあるかも知れないですが、もう一度その経緯などをご説明いただいて、その思いを市民と共有しながら法務省にお届けするということができたら良いと思います。

鈴木 私ども商工会議所として先日、加藤市長宛に「三の丸地区を長い将来小田原市民のために活かせる方向で考えていきたいと思うので、ぜひ今ある施設の移転に関しては積極的に動いてもらえませんか」という要望を出させていただきました。国の施設を移転していただくとなると、当然「どこへ」ということも提案しなければならない。そこで近い将来移転されると聞いている少年院(扇町)を候補地にお示ししました。

 仮に小田原市にお金がないということであれば、民間で思い切って、あるいは小田原には中心市街地活性化法にのっとって作った街づくり会社もあります。

外郎 今なら例えばクラウドファンディングとか、色々な形で資金は集められると思います。そこで大切なのは賛同です。やはり50年後、100年後の小田原のイメージをデザインして絵にしていったほうが良い。小田原市も多分そういうことをお考えの上で街を設計していると思います。我々も単に今の問題だけでは無く、次の世代に残すための絵をお見せしながら、「いいな」と思っていただければ、賛同者も分かりやすく入ってこられると思います。

草山 人口が減り高齢化が進み税収も減る。やはりどこかで経済的なものを維持、発展させていかなければならない。その一つが観光です。お金はいわゆる観光事業者にしか落ちないと思われがちですがそんなことはない。従業員さんや取引先から始まり、二次、三次とお金は流れ、税収や土地の資産価値にまでつながります。文化的にも商業的にも、自分の町の歴史を財産として共有し、次の世代の人たちにも継承していくことは大切なことだと思います。1社1社ではできる額も限られますが、みんなで集まり、共有すればその意義や方策もあるのではないでしょうか。

鈴木 やはり小田原にとって、小田原城とその周辺が大切な場所でありチャンスなんだろうと思います。

 三の丸地区の法務省施設の場所は国有地です。国の財産ということは国民の財産、つまり私たちが地主なんですね。小田原の皆さんが自分たちの財産を将来のために「こう使いたい」と声を上げることは、失礼でも理不尽なことでもない。国も含め行政に動いていただく一番大きな力は「市民の声」です。このテーマをより多くの市民の方に知っていただき、議論が深まっていけば良いと思います。本日は有難うございました。

■企画/小田原箱根商工会議所

平成20年に市民提案された三の丸地区イメージ図
平成20年に市民提案された三の丸地区イメージ図

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