汚泥焼却灰埋め立て 「凍結」も拭えぬ不信 「事前説明なし」に住民ら反発
林文子市長は9月14日、放射性物質が検出された下水汚泥焼却灰の南本牧廃棄物最終処分場(中区)への埋め立てを「『凍結』する」と表明した。住民や港湾・漁業関係者の猛反発を受けての決定だが、議会や地元への事前の説明がないままに埋め立てを実施しようとした手法に不信感が強まっている。
港運協会「即刻中止を」
「安全が確認できたため下水汚泥焼却灰を9月15日以降、南本牧廃棄物最終処分場に埋立処分します」。横浜市がこう発表したのは9月9日だった。
決定を知った市民の反発は強かった。翌10日に「埋め立て」が報道されると、ツイッターなどを通じて瞬く間に”拡散”。反対する市民が集まり「南本牧処分場への放射性焼却灰海面埋立に反対する会」が結成された。同会は9月13日、林市長あてに抗議文を提出。「ふたもない海に放射性物質を捨てることで周辺に影響が広がる」などと中止を訴えた。
さらに港運業者らの業界団体である横浜港運協会が「南本牧の主顧客である船会社が横浜港忌避に走ることが懸念される」と埋め立ての即刻中止を申し入れたほか、市議会常任委でも異論が噴出したことなどから、わずか5日で林市長自ら「埋め立て凍結」を表明する事態になった。
今回横浜市が埋め立て処分をしようとした「下水汚泥焼却灰」は、下水を濃縮、脱水した上で焼却処理したもの。これらはセメントの原料等として再利用されてきた。しかし福島第1原発の事故を受け、南部汚泥資源化センター(金沢区)でも6月17日にこの焼却灰から6468ベクレルの放射性物質が検出されるなどしたため、現在は再利用を中止し施設内に保管している。その量は8月末時点で南部センターで約2300トン、北部汚泥資源化センター(鶴見区)で約440トンに上っている。
国が6月に「8千ベクレル/kg以下であれば、個別の安全評価を行った上で処理できる」とした下水処理副次産物の取り扱いの方針を自治体に通知したため、横浜市でも専門家に安全評価を依頼。その結果、濃度が目安を下回ったため「安全が確認できた」として埋め立てを発表したが、地元や港湾関係者に事前の説明がなかったため、反発が広がることになった。
1ヵ月で保管限界に
ただ下水汚泥焼却灰の処理も待ったなしの状況だ。このままのペースで焼却灰が増えれば1ヵ月以内に保管が困難となると予想されており、市資源循環局では「市民生活にも影響が出る」と危機感を募らせる。
市では今後、対策を徹底した上で地元への説明会などを開催し、市民に埋め立ての「安全性」への理解を得たい考え。一方で「反対する会」共同代表の渡辺純さんは「偏った学者の意見で安全と言っているのではないか。様々な立場の有識者から意見を聞き情報を明らかにしてほしい」と話す。
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