「LGBTの人も、そうでない人も、誰もがありのまま楽しめる場所に」。一色海岸に今夏、同性愛者や心と体の性が一致しないなどの性的少数者(LGBT)らが運営するスペース「カラフルカフェon(オン)the(ザ)beach(ビーチ)」が登場した。同海岸で長年海の家を運営する「UMIGOYA」と一色にある夏限定の喫茶店「カラフルカフェ」による初の試みだ。
「性の隔てなく楽しめる場に」
「いらっしゃいませ」。海の家の一角に設けられたカウンターでは様々な種類のカクテルやノンアルコール飲料、日替わりの軽食を提供する。更衣室の看板に描かれた男女とその中間を表すロゴ、虹色の水着は性別を問わず利用できる「ジェンダーフリー」のサインだ。
運営の中心は、LGBTの理解啓発や当事者の社会支援などを手掛ける認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」。同法人は2011年から海近くでLGBTのメンバーらが働くカフェを運営してきた。
一方、UMIGOYAは同海岸で海の家を運営して14年目。砂浜に建てられたオープンテラスでは海を眺めながら飲食を楽しめ、家族層や外国人客など幅広い層から支持を得てきた。「長年やってきた中でお客様に多様な価値観が定着している。(LGBTの人たちとも)何かできないかと思った」と代表の村野義哉さん。
シーズンに向けて同法人を中心に建築事務所とのタイアップやクラウドファンディングなどを取り入れながら準備を進めてきた。スタッフは約30人。皆仕事を抱えており、週末の余暇を使ってボランティアで店頭に立つ。職業は会社員やデザイナー、建築家、教員など様々だ。
LGBTめぐる変化
性的少数者を取り巻く環境は近年、変わりつつある。今年3月、渋谷区で同性パートナー条例が全国で初めて制定されたほか、6月にはアメリカで同性婚が合憲と判断。交流サイト(SNS)などでも認知や理解が広まっている。「(LGBTについて)公の場で議論され始めたのは素晴らしいこと」。同法人副代表の橋本美穂さんはそう話す。
ただ、これまでの偏見や差別意識も根強く、当事者の多くは本当の自分を隠して普段の生活しているのが実情という。「自分は職場では知られているが、自ら打ち明けるにはやはり勇気がいる」と男性のひとりは話す。「家族に言えば親にも精神的に負担をかける。胸にしまいこんでいる人は未だに多いはず」と橋本さん。橋本さんは35歳を過ぎて自分がLGBTだと気が付いた。隠しはしなかったが、「異性の恋愛と同じなのね」。最近なって母親がかけてくれた言葉が「すごくありがたかった」
カラフルカフェを始めて5年目。シーズンを重ねるごとに毎年足を運ぶ常連もできるなど、店は地域に浸透してきた。昨年店長を務めた30代の女性は「葉山での顔見知りが増えて、地元の方とあいさつを交わしたり。些細だけど、人の輪が広がることがうれしい」
メンバーらの胸にあるのはささやかな願いだ。「権利を主張したいわけじゃない。ただ、自分たちがいることを自然に受け止めてもらえたら」
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