寄稿 特別展「愛された金沢八景」に寄せて 【1】北斎描く金沢八景 文/神奈川県立金沢文庫 山地純
金沢八景の絵というと歌川広重「金沢八景」八枚組や「武陽金沢八景略図」という同じ構図で何種類もある八景図を思い出す方が多いと思いますが、今回は葛飾北斎描く金沢八景をご覧いただきます。
この絵は横九切版という小さな八景図ですが、遠近法を用いた洋風画です。空には狂歌三首が書かれています。江ノ島、鎌倉との三枚組で、「摺物」と呼ぶ特別注文品の一図です。一般の浮世絵と異なり、この場合は狂歌を詠った人々がお金を出して作らせたので「狂歌摺物」です。そして絵を描いたのは葛飾北斎。画面右上にひらがなで「ほくさいうつす」とサインのように書かれています。
絵の中心に二つ橋になっている瀬戸橋が描かれ、その先に瀬戸明神の森と鳥居が見えます。右手に見える小島は照手姫で有名な姫小島でしょうか、でも瀬戸橋の向こうに琵琶島弁天が見えませんから、琵琶島弁天のつもりかもしれません。烏帽子岩も見えますが、夏島が見つからない、と実景とは少し異なる景色です。でも狂歌に「金沢八景」「瀬戸の明神」と詠われていますから、金沢八景図です。
楠山永雄さんご自慢のこの逸品。ぜひ実物をご自分の目で確かめて下さい。
|
<PR>
|
|
|
|
|
|
|
<PR>