(新潮社)著・三島由紀夫 物語でめぐるわが街 『春の雪』文・協力/磯子図書館
三島由紀夫の最後の長編小説『豊饒の海』全4巻の1巻目、「春の雪」(昭和44年刊)。物語の舞台は明治末から大正の東京、松枝侯爵家の一人息子清顕と、綾倉伯爵家の令嬢聡子の恋愛が描かれています。
磯子区が登場するのは物語の中頃、聡子が両親と共に横浜郊外にある洞院宮別邸を訪れる場面です。「洞院宮御別邸は、海を見下ろす高い崖上にあり、御殿風の外観を持った洋館には、大理石の階段がついていた」
この洞院宮別邸のモデルが、磯子3丁目の高台にある「旧東伏見邦英伯爵別邸」といわれています。この邸宅は東伏見邦英伯爵が昭和12年に建てたもので、物語の年代より後ですが、根岸湾埋立前の当時、崖下の少し先は海という風光明媚な場所にありました。戦後、建物は進駐軍に接収された後、昭和29年に西武グループが取得、横浜プリンスホテルの小宴会場などとして活用され、平成18年のホテル営業終了後に一旦閉鎖。平成26年からはレストランとして利用されています。また、平成5年に横浜市の歴史的建造物に認定されました。
『豊饒の海』は全4巻を通して「輪廻転生」が一つのテーマになっていますが、この建物も時代によって転生しながら、現在に続いています。
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