横浜の港町をこよなく愛した作家、大佛(おさらぎ)次郎。没後40年にあたる今年、港の見える丘公園内の記念館では4月19日から、特別展「大佛次郎と神奈川・未来へのメッセージ」が開かれる。展示内容は故郷「横浜」、居を構えた「鎌倉」、江の島などをはじめ親しみを持っていた「神奈川」の3部からなり、自筆原稿をはじめ挿絵原画、手紙など貴重な資料が並ぶ。7月15日まで。
大佛次郎(本名、野尻清彦)は、1897(明治30)年10月9日に現在の横浜市中区に生まれた。7歳で東京に転居、東京帝国大学在学中に結婚し、卒業後は鎌倉に移り住む。鎌倉高等女学校(現、鎌倉女学院)の教師となり、その後は外務省にも勤務している。
1923(大正12)年の関東大震災を境に経済的に自立するため、文筆業に専念。住居は鎌倉のままに、生まれ故郷である横浜のホテルニューグランドの一室を、10年ほど仕事場にしていたという。
代表的な作品には時代小説の「鞍馬天狗」や「赤穂浪士」、明治時代の横浜の外国人居留地を描いた「霧笛」、現代小説の「帰郷」、ノンフィクションの「パリ燃ゆ」に未完の「天皇の世紀」などがあり、幅広い分野を手がけている。
今回の特別展では、ホテルニューグランドの仕事場を、調度品などとともに再現。また、「霧笛」などの自筆原稿や日記、文士からの大佛宛て書簡などが展示される。
大佛は、自然環境保護のために土地を買い上げる「ナショナルトラスト運動」を日本に紹介したことでも知られており、自身が収集したその運動関連の資料も展示される。大佛が鎌倉で積極的なトラスト運動を推進したことがきっかけで、「古都保存法」が制定(66年)された。
言葉に今日性あり
特別展開催にあたり同館の福富潤子副館長は「大佛は、生涯を通して横浜や鎌倉などに対する郷土愛で溢れている。震災後、改めて地域を見つめなおすことが求められている現代において、大佛の残した言葉には、今日性を感じさせるものが多い」と話している。
観覧は午前10時から午後5時30分まで。月曜日休館(命日の4月30日は開館)、大人200円、小中学生は100円。特別展の詳細は同記念館【電話】045・622・5002へ。
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