「亀の甲せんべい」にまつわる歴史をまとめ、2冊の資料を刊行した 篠崎 順一さん 神奈川図書館在勤 63歳
歴史記録し後世に継ぐ
○…神奈川宿の名物とされた「亀の甲せんべい」にまつわる歴史を2冊の書物として20年ぶりに再編した。「忘れられつつある存在を再認識してもらうためにも、文字として残せたことにホッとしている。何十年先も亀の甲せんべいを知ってもらう入り口として活用し続けてもらえたら」
○…幼少期は祖父母の所有していた戦前の本や古銭、近所の古い墓石など、歴史を感じられるものが興味の対象だった。大学時代、友人の父で県立長野図書館長などを務めた叶澤清介さんの出版を手伝い、資料整理や司書の仕事に触れたことで図書館での業務に魅力を感じた。初めは瀬谷図書館の開館に携わり、神奈川図書館に異動後は区の出来事や横浜シネマ商会などについての資料を編さん。その後歴任した市内の図書館では風景写真を閲覧できるデータベースを作成し、歴史を伝える枠作りなどにも取り組んだ。
○…1997年に父が他界。父が病床に伏していた際はかたわらに寄り添い、人生を聞き取って1冊にまとめたことでその生涯を追体験した。完成時に父に喜んでもらえたことが、これまでの活動の原動力という。様々な歴史を文字化する中で、大切にしていることは当事者の思いを汲み取ること。「学者ではないので応援するような意識。それぞれに思い入れがある」といい、『横浜のパン資料集』を刊行した後はパン作りが趣味になった。
○…今後は地元の中区・根岸についての調査やデータベース作りなどを構想中。「小さな頃は郵便局や交番などがある街並みだったが、今では住宅街となった移り変わりがあまりまとめられていない。その研究の基礎作りができたら」と、足元に眠る歴史を掘り起こしたいという。
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