第3回神奈川区写真コンテストで一般部門の最優秀賞に輝いた 田中 文夫さん 松ヶ丘在住 76歳
「写真は生きがい」
○…光に向かって暗闇を抜け出そうとしている写真が、「現在の日本を映し出している」と評価された。健康維持のため、自宅から横浜駅までのウォーキングが日課となっている。もちろん、カメラは肌身離さない。昨年4月に「高島山トンネル」がオープンし、「東横フラワー緑道」(東白楽駅〜台町=1・4Km)が全線開通、緑道はお気に入りの散歩コースとなった。「受賞作品は狙って撮ったものではなく、偶然の産物です」
○…神奈川区出身。地元の青木小に入学するが、すぐに現青葉区奈良町に疎開。終戦後に三ツ沢小を卒業した。幸い自宅は無事だったが、「防空壕に避難した記憶が忘れられない」と目を潤ませる。カメラとの出会いは栗田谷中1年の時。父のカメラを手にしてから64年が経つ。「当時のフィルムは、進駐軍からの払い下げだった。12枚しか撮れないから大事に使いました」と振り返る。
○…県立翠嵐高校を卒業後、横浜市大の商学部に進んだ。祖父が趣味にしていたこともあり、能楽研究部の門を叩いた。学生時代は能楽堂で開催される発表会を目標に、脚本に節をつけて謡う「謡曲」にのめり込んだ。製造メーカーに就職後も、数年間は写真部と能楽部に所属していた。
○…もう一つの趣味は、クラシック鑑賞。これまで300以上のコンサートを観てきた。「指揮者の解釈によって、まったく違う音楽になるのが面白い」。写真家では、第二中学校の大先輩である故・土門拳さんに強く憧れる。山形県酒田市にある記念館にも足を運んだ。「どれも圧倒される写真ばかり。労力をいとわない作風に魂を感じた」。13年前にデジタルカメラを購入。現像する手間が無くなり、データ保存用のCDは、2000枚を超えた。「動けなくなるまで撮り続けたい。写真は生きがいですから」。言葉どおり、愛用するカメラは、シャッターのメッキがはがれている。