屋根ふき工として平成28年度技能功労者等表彰を受賞した 清水 一さん 白幡仲町在住 69歳
「好き」の気持ちで生涯現役
○…50回目を迎えた横浜市技能功労者等表彰。経験年数30年以上かつ60歳以上で「極めて優れた技能を持ち、他の模範となる指導的役割を担っている職人」に贈られる。屋根ふき工ひと筋50年。受賞者51人のうちの1人として選ばれ「思ってもみなかったけど、好きじゃないと良い仕事はできないからね。励みになるよ」と、賞状の入った筒をもてあそびながら少し恥ずかしそうにほほ笑む。
○…「戦後まもなく、父が当時闇市だった六角橋商店街を荷車1台で訪れ、金物屋を始めてね」。その後、清水金物店が開店。マイホームが完成した白幡仲町に引っ越す小2までは、店の2階で姉や妹らとともに家族6人で生活した。「六角橋は昔からあんな感じで店がひしめきあっていたよ」。横浜高校を卒業し、自動車整備工として働いていたが、友人の手伝いで屋根ふき工の仕事に出会う。
○…数年で親方のもとを離れる仲間も多かったが、「恩返ししてから」という気持ちから10年ほど修行。30歳を過ぎて独り立ちした。石材を使った屋根づくりの腕を磨き、恵比寿ガーデンプレイスやゴルフ場のクラブハウスをはじめ、岩手銀行本店の修復工事など重要文化財の工事も多く手掛けてきた。苦労したことを問いかけられ「毎日弁当を作ってくれた家内が一番大変な思いをしたと思う」と、妻が電話している間にこっそり感謝の言葉を口にした。転落して手首を骨折する大けがも経験。常に危険と隣り合わせの仕事だが、「自分の家だと思って納得のいく仕事を心がけている」と深くうなずく。
○…休日は妻と自宅で過ごすことが多い。息子2人も父の背中を追うように同じ道を進み、中学生からもうすぐ成人を迎える孫5人にも恵まれた。腕の中で心地よさそうにいびきをかいている愛犬、クリムをなでながら「こんな年齢だけど、今後もこのまま仕事を続けていけたらいいね」と笑みを浮かべた。