川崎市と川崎市薬剤師会(嶋元会長)は、ソニー(株)と「電子お薬手帳」の試験サービスに関する協定を先月末に締結した。2014年度末で切れた協定を新たに結び直したもので、さらなる利用者と薬局の拡大、多様なサービスへの対応を目指す。
「電子お薬手帳」は、専用のカードとスマートフォン用のアプリケーションにより使用するもので、利用者が薬局の端末にカードをかざすと調剤履歴の閲覧や記録ができ、スマホアプリを利用すれば、自宅や外出先でも情報閲覧ができるほか、診察時の症状や服用後の副作用などを記録することもできる。
導入にあたり懸案だったのが、不正アクセスによる個人情報の漏えい。しかし導入したソニー(株)のシステム「harmo(ハルモ)」は、従来はサーバにセットで記録する調剤情報と個人情報データを、調剤情報はネット上のサーバ、個人情報は所有者の非接触型ICカード(FeliCa)に分離して管理。サーバに不正アクセスがあっても、個人情報は守られる。
また災害等でICカードを紛失した場合も、調剤情報はサーバに保存されているので、データを残したままカードを再発行できる。
家族の登録もでき、家庭内の調剤履歴を一元管理できるほか、遠隔地でもスマホでデータ確認ができ、遠方に住む家族の健康状況を把握することも可能など多岐に利用できる。
このシステムは、まず宮前区で2011年から試験導入され、区内では現在25の薬局で導入されている。
その後、13年秋から川崎市全域での運用を開始した。市全域での導入に際し、市と市薬剤師会は、13年11月にソニー(株)と今年3月末までの協定を締結。これまで132の薬局に導入され、すでに申請が出ている店舗も含めると140になり、利用者も1万人を超えるなど順調に浸透している。今回その成果を評価し、さらなる利用者と薬局の拡大、多様なサービスへの拡充を目的に、新たに15年度に実施する試験サービスに関する協定を結んだ。
区薬剤師会の伊藤啓会長は「宮前区から取り組みがスタートし、13年度に行政と手を組み市全域に広がりました。現在は、横浜市も含め利用者が1万人を超えるなど、発祥の地として市の中で千人弱の協力者により粛々と行ってきた活動が全国規模に膨らんでいます。今後はさらに利用者が増えていく中で、改めて安全性に寄与しながら進めていくことが大事と医師らとも話しています」と語る。
一方、協定が再締結されたソニー(株)の担当者は「市と市薬剤師会と改めて協定を締結でき、喜んでいます。今後もより多くの市民にこのサービスの利便性を感じてもらえるように弊社としても取り組んでいきたいと思います」とコメント。
また、市薬剤師会の嶋元会長は「カード1枚で市民の情報を地域の薬局で共有できるということは、薬の適正使用という安全・安心の面からも非常に重要。今回また1年間試験サービスを続けることで、できるだけ多くの人に持ってもらえるように努力していきたいです」と話している。
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