元大和市職員で慶應義塾大学特任助教授の高木超さん(33)による初の著書『SDGs×自治体 実践ガイドブック』(学芸出版社)が3月に発売された。自治体職員がSDGsを活用するための方策をまとめた「教科書」となる一冊だ。
「縦割り」打破も
SDGsとは2015年に国連で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。日本では17年に地方公共団体でのSDGs推進が閣議決定され、積極的に取り組む「SDGs未来都市」として、県内では県、横浜市、鎌倉市、川崎市、小田原市の5自治体が選定されている。
本書ではSDGsの基礎知識からワークショップの実践例まで詳細に紹介。高木さんは「SDGsの根本的な考え方は『誰ひとり取り残さない』で、自治体のそれそのもの。しかし多くの自治体では、事業をSDGsの目標に当てはめるだけで満足してしまっている」と課題を挙げる。本書を通じ政策を見直す軸としてSDGsを捉えることで、縦割り行政を打破し、発想の転換も期待できるという。
一念発起し渡米
高木さんは東京都出身。13歳の頃、サッカー留学で訪問したブラジル・リオの治安の悪さに驚き、自治体の大切さを知り公務員を志した。大学では国際政治経済を専攻。卒業後はNPOを経て、2012年に大和市役所へ。在職中は市民協働、基地対策等を担当した。「外国人の方が多いことを魅力に感じ大和市を志望した。市職員として学んだ多角的な物事の捉え方は、今の私を支える大きな財産」と話す。
2017年、「自治体職員経験のあるSDGsの専門家が必要になるはず」と退職し一念発起、渡米。国連訓練調査研究所とクレアモント大学院大学が共催する「SDGsと評価に関するリーダーシップ研修」を日本人で初めて修了した。現在は慶大助教のほか、ミレニアム世代がSDGsに取り組む団体「SDGs─SWY」共同代表や鎌倉市SDG推進アドバイザーも務めている。
元市職員としての経験を生かし、現場の職員に寄り添った活動をしていきたいと語る高木さん。「公務員はミスが許されず、新たな事に挑戦しにくいのは事実。SDGsは身近なところから取り組めるということを、分かりやすく伝えていきたい」と展望を語った。
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