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厚木・愛川・清川 人物風土記

公開日:2024.06.07

消防署長を定年後に始めた日舞で現在師範を務める
千波 永松(えいしょう)さん(本名:落合穂積)
厚木市宮の里在住 75歳

心豊かに舞う人生

 ○…伊勢原市消防署長を定年退任後、日舞を習い始め現在千波流師範にまでたどり着いた。もともと踊りを楽しみたいという趣味の延長のような気持ちでこの世界に飛び込んだが師範という立場になり、「まわりの私に対する見方の変化を感じる。観ていただける方たちに『観てよかった』と思っていただきたい。趣味気分のままではいられない」と引き締まった表情。今は11月に披露する予定の踊りの稽古に邁進する日々だ。

 ○…学生時代に父親が地元の消防団長を務めている姿を見て憧れ、消防士を志し、伊勢原市消防署に入隊した。現役時代は危険な現場に出動することもあったというが、「人を助ける人のために働く仕事。やりがいがあった」と自信を持って答える。一番学んだのは規律とし、それが礼儀作法を重んじる日舞に繋がったのかもしれない。子どもの頃から盆踊りが大好きだったこともあり、「同じ踊りだから」と近所にある千波朱永さんの教室へ。すぐに大衆芸能でなく舞台芸術の世界に魅了された。

 ○…息子2人が独立し、奥さんと娘の3人暮らし。家族は舞台を観に来るなど応援してくれており、ある時鑑賞後に息子が「いいじゃん」と言ってくれたと満面の笑み。一方で、経験を活かし住民と共に地区の自主消防隊を組織。定期的に訓練も行い、有事に備える。「地域のためにお役に立てれば」と正義感は消えない。

 ○…今後は舞台のほかに、子どもを対象とした教室や中年世代を巻き込んだ企画などに携わる計画もある。「日舞は心が豊かになる文化。心を柔らかく素直な気持ちでいないと、いいものが入って来ない」。「素晴らしい先生との出会いと家族の応援」―踊り続ける理由がそこにある。

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