110周年を迎えた新名学園旭丘高等学校の理事長を務める 水野 浩さん 市内清水新田在住 74歳
次の10年へ新たな一歩
○…「将来の見通しや展望が立ちにくい現代に、子どもたちは未来の可能性を語ってくれた」。110周年記念式典を振り返り目を細める。節目の時を迎え、学園構想に「地域立・市民立」の言葉を掲げた。子どもの成長や発達は地域の願い。「改めてここに存在し続ける使命、教育や学校のあり方を考えさせられた」と表情を引き締める。
○…生まれは東京の神田。歌舞伎座が近く役者や芸者の子どもたちと机を並べた。「(彼らは)『おけいこ』と呼ばれると授業を抜けていた。一緒に抜け出して、後でえらく怒られたね」とやんちゃな幼少期を振り返る。同時に、戦時下でも「おけいこ」を欠かさない姿を「下町の気風」と話す。国民学校2年の時に母の実家である小田原の地へ。終戦の日、小田原で日本が最後に受けた空襲の時には作家の三好達治と一緒に逃げたという思い出もある。
○…小田原高校卒業後は「人生の迷い期間」を過ごした。多感な時期に文学や学生運動にふれ、多くの刺激を受けたという。「人生いかに生くべきか、という時代風潮だった」。世の中を改革しよう、という気概でつながった仲間たち。青年期に歩む方向や発達への関心こそ、教師生活の原点だ。
○…中高の教育課程の連結や幼保連携の「子ども園構想」など、新たな学校づくりの展望は尽きない。提携を結ぶ中国の西安外国語大学にも、今月視察に訪れる予定だ。「文化や教育という学校の得意分野で、日中の友好のかけはしになりたい」。とにかくエネルギッシュ。その源は?と問うと「生きているでしょ」と言葉を選ぶ。「生きることは必ず何らかの問いを育てる」。人や書物や自然との多くの出会いが新たな問いを生み、次々に好奇心が生まれる。「明日のことを考えるより、今日沸き起こる関心の方がおもしろい」とカラリと笑う。44年の教師生活を「振り返る暇がないうちは現役」と、次の10年に向け走り出す。
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