2018「木のクラフトコンペ」大賞を受賞した 松本 育さん 久野在住 26歳
木の世界で生き、つくる
○…受賞の知らせを聞いたのは、同じ木工職人の先輩女性からの電話だった。その後も仲間から祝福が続々と届き「最初は本当かなって。取れると思っていなかったので驚いた」と目を丸くする。「木が持つ美しさを使いたい」と、素材には桂の中でも黒味を帯びた、太古から土に眠る神代木を選んだ。施された細かな寄木は星空をイメージ。「凝っていて、可愛いものが多い」洋菓子屋のパッケージからヒントを得たものだ。接着しては乾かし、ピタリと組み合わせ…構想から3カ月。3度目の挑戦でつかんだ初の栄誉は、史上最年少というオマケつきだ。
○…色白で、158cmの華奢な身体。木屑にまみれ、時に重い木材を担ぐようには到底見えない。大阪で生まれ育った幼少期も「内向的」。小学生の頃、本屋で見つけた一冊の手芸本がものづくりの世界を開いた。折り紙や編み物など黙々と作り込み、この頃から「手に職を」と志して、高校卒業後は専門学校へ進学。「ゼロからデザインするより、素材を活かす技術」で勝負する木工を専攻し、就職先を求め寄木の里・小田原へ。厳しい世界に飛び込むにあたり「考え直した方がいい」と受け入れに難色を示されたがめげず、がむしゃらに働いた。あれから6年。今では任せられる作業も増えてきた。「こう見えて根性あるんだよなぁ」と話す勤め先の師匠が、今回の受賞を誰よりも喜んでくれた恩人だ。
○…小田原は、東京や箱根の美術館が近い点がお気に入り。休日はゆっくり美術鑑賞に出かけ、創作意欲を膨らませる。とはいえ、ハードな立ち仕事には付き物の腰痛を悪化させないよう、作品づくりも趣味の編み物も休み休み。「つくるのが好き。その気持ちがある以上、職人でいたい」。そう語る目は曇りがない。
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