現代美術展小田原ビエンナーレ2019に参加している 田岡 楚香(そこう)さん(本名:和子) 小田原市浜町出身 61歳
楚々と、そして大胆に
○…イメージは筆を伝い紙の上で自由自在に舞う。墨の濃淡で描きだすのは古代亀甲文字や仮名、漢字など文字をモチーフにしたものから抽象的な作品まで。書家であり現代芸術家。線の動き、にじみ、余白――同じものは一つもない。「一発勝負というところが自分にあっています」。納得のいく1枚に出会うため、100枚以上書くことも少なくない。
○…自宅で書道教室を主宰していた両親のもと「墨の香りを感じて育った」。物心つくころには半紙に筆を走らせていたが、将来の夢はイラストレーター。「色彩のある世界にあこがれていたんですかね」。高校卒業後、武蔵野美術短大(当時)を経て都内の広告代理店に就職。若手スタッフとして映画のポスターやテレビ番組制作に携わった。20代半ばで結婚、1男に恵まれ、創作の世界からは自然と離れていった。
○…ある日、母に誘われ出かけた美術館で、前衛書の大家・稲村雲洞氏(2016年没)の作品に出合う。文字にも絵にも見える何かが訴えかけてくる。「こういう世界があるんだ」。自分の概念を超える書の可能性に魅了され、稲村氏の門を叩いた。漢字、仮名はもちろん古典、音楽や芸術など「幅広く学んでやりなさい」という師から贈られた雅号が「楚香」。意味は聞かずじまいだったが「楚々とした香りのイメージかなと勝手に思っています」といたずらっぽくほほ笑む。
○…ここ数年は、都内の自宅と浜町のアトリエを行ったり来たり。若いころは「都会のキーンとした雰囲気」が気に入っていたが、今はふるさとの風や木々の香りが心地よい。朝、アトリエ近くの海岸で潮風をあびることも。「拾った石を文鎮がわりに使ってますよ」。輝く瞳の奥には新たなイメージが生まれている。
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