史実をもとにした創作童話で逗子の歴史を伝える児童文学作家 野村 昇司さん 逗子市逗子在住 79歳
”逗子の話”後世に
○…「明治から現代にかけての逗子って意外と知られてないんですよ」。地域の人や後世に近代の「逗子の話」を伝えようと史実をもとにした創作童話をこれまでにいくつも作ってきた。昭和始めの水事情、名越トンネルができるまでの苦労話、田越橋の誕生経緯などに独自の創作を加え、子どもにも分かりやすく童話としてまとめた。目を通すと思わず「へぇ」と口をつくエピソードが随所に並び読者を引きつける。
○…30の半ばから児童文学作品を書き始め、共著を含めるとその数は80を超える。一貫しているのが史実をもとにするスタイル。「取材の視点がはっきりするし、話も作りやすい」という一方で、事実を歴史の狭間に埋もれさせたくない想いもある。終戦後、小坪に残された砲台跡で遊んでいた10数人の子どもが命を落とした事件をもとにした著書『砲台に消えた子どもたち』は当時の海軍の機密文章を公開させるきっかけになるなど波紋を呼んだ。「忘れられてはいけない事件。知ってもらわなきゃという使命感もあった」と振り返る。
○…「作家という自覚は全くないんです」とキッパリ。大学卒業後は小学校の教師、定年退職後は大学の講師を務めるなど教育畑一筋に生きてきた。だから自身にとっては創作活動も教師としての延長線上。02年には528人という応募者の中から市教育長にも選ばれた。今年7回目を迎えた手作り絵本コンクールは自身が創設。今も審査員を務め、「年々作品の質が高くなっている。毎回楽しみにしてくれる人がいるのは嬉しいこと」と目を細める。
○…近々、一部の作品を地域の写真家や音楽家らと協力して映像化する予定がある。「いずれは地域の教材に活かせれば」と目線は教師だった時のまま。また新しい物語の創作に向けて新たな取材を進めるなどその意欲は尽きない。逗子の話を後世に。「それが僕の最後の仕事じゃないですかね」と笑顔で結んだ。
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