「時間がない人こそ、しっかり自分の時間を大切に使ってほしい。ここでは皆で楽しく、身体に良い料理を作って、美味しく食べる。たったそれだけ」
鴨居の住宅街。ひっそりとたたずむ一軒家には看板もない。主婦の小澤由利子さんはここでマクロビオティックス料理の教室を開いている。
特に力を入れているのは介護などで自分のための時間を取りにくい人たちへのケア。自身も介護経験があり、家族を思うあまり、自分の事がどんどんおろそかになる辛さを味わった。「終わりなんて考えたくもない、でも辛い。そんな矛盾を抱えていた」と振り返る。
加えて介護者を悩ますのが介護食の栄養管理だ。油や糖を抑えようとすると食事はどんどん味気なくなる。そんな時、出会ったのが「マクロビオティックス」だった。旬を取り入れ、自然の旨味を最大限に活かしながら、滋味深い料理に仕上げていく。食材の選び方やちょっとした工夫で、心の底から「美味しい」とじんわり感じるメニューをつくりだす。
運動が苦手になっていた小澤さんの母親も、この食事をとりだして、減量を成功させることができたという。「大切なのは美味しいと感じられる食事であること。毎日のことだから」と小澤さん。2人の娘たちにも、顔色や体調を見極めた料理をサッと提供する。「朝起きるのがつらそうだから今日は玄米にしておいたよ」の一言に家族を思う母の愛情が見え隠れする。
最近、生徒たちからの要望もあり、配食サービスも始めた。介護の手を少しだけ休め、家族に自分たちの時間をあげたいと思う一心からだ。「一食だけ私に任せて自分の時間を作って。その分、身体に良いお弁当を用意しておくから」と配達までを引き受ける。
私立小学校での環境食育や講演など、外での仕事も増え始めた小澤さん。忙しさは日に日に増すが、「この料理教室だけは大切にしたい」と決めている。「ひとりでやっているから、対応できるのは本当に少人数。でも、できる範囲で続けていきたい」と話した。
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